株価がどうなろうとも米通貨当局はインフレ退治を優先

1.インフレ状況

アメリカのインフレ率は、このところ異常な高まりを見せています。今年5月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で約8.6%も上昇。これは1981年12月以来の歴史的水準です。

【図表2】2019年以降のアメリカのインフレ率推移
出所=米労働省労働統計局のデータを基に編集部で作成

後述する中間選挙において、米国民が最も高い関心を示しているのがこのインフレ対策であり、バイデン政権や民主党の支持率低下の原因にもなっています。

インフレ懸念自体が株価への重しになっているとともに、インフレによって企業のコスト負担が増大し、それが今後の成長を阻害するといった景気後退懸念を引き起こしてしまっています。

2.利上げ

アメリカの中央銀行に相当する連邦準備制度(FRS)の最高意思決定機関、連邦準備制度理事会(FRB、The Federal Reserve Board)は、現在のインフレの退治を最大の焦点としています。彼らが今年に入ってから一貫して示してきたのは、「株価がどのようになろうとも、何よりインフレ退治を優先する」というメッセージです。これが今年上期の株式市場の下落を招いたともいえます。

FRBは積極的に政策金利引き上げをして、インフレ退治を進めています。コロナ禍以降事実上のゼロ金利政策を取ってきたFRBは、今年3月に0.25%、5月に0.5%、6月に0.75%の利上げを行い、6月末時点の政策金利は1.5~1.75%。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも、0.75%の利上げを発表しました。今後さらに9月、11月、12月の3回の利上げが見込まれており、今年中にあと1.75%(予測中央値)の利上げが行われると観測されています(9月0.5%、11月と12月に0.25%という計算)。