歴史的な円安が続き、「値上げ」のニュースが相次いでいる。金融政策はこのままでいいのだろうか。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣さんは、「日本経済はまだまだデフレで、インフレを心配する段階ではない。円安を恐れるよりも、積極的な財政支出を行うべきだ」という――。
「政府の借金」は「子孫の代へのツケ」ではない
政府の債務残高の対GDP比は、コロナ禍で250%を超えた。
しかし、政府・日銀のバランスシートを合わせた「統合政府」論でみれば、大きな問題ではないことがわかる。
債務残高の裏側には、必ず資産があるからだ。
実際、日銀の資金循環統計を用いて、一般政府の純債務と民間の純金融資産を比較すると、一般政府の純債務残高は、2021年末時点で、700兆円を超えている。
一方、民間の純金融資産高は、21年末時点で、1100兆円を超えていることがわかる。
政府債務残高が将来に引き継がれるなら、その裏にある民間金融資産も引き継がれることになる。
つまり、政府債務とは「子孫の代へのツケ」として、必ず減らすべきものではない。逆に、政府債務を減らせば、民間の資産も減っていくことになる。