そのためには、「理想」や「課題」について、顧客がそのシーンを頭の中に思い浮かべやすいよう、臨場感を持って営業担当者が語ることが大切です。具体的な数字や過去の顧客のコメントなどがあると、さらにいいでしょう。

まずは過去の取り組みを事例として伝えられるように準備しておくこと。加えて、顧客との商談前には、ほかの営業担当者に似た事例がないかを聞いておくことも重要です。

生き残りの分岐点…「売らない営業」になれるか

本章では、営業という仕事の役割を単なる商品・サービスの「売り込み」ではなく、「顧客の理想の実現」であると定義しました。

あなたが、顧客の理想の実現を手助けするような営業ができているかを判別する一つのポイントがあります。それは、顧客に対して次の一言が言えるかどうかです。

「御社は、この商品・サービスを今は買わない方がいいと思います」

顧客と一緒に「理想」を描き、「課題」を見つけて、「理想」と「課題」のギャップを埋めるための方法を考えていく。これを実践していれば、時には自社の商品・サービスが顧客の理想実現や課題解決にそぐわないケースも出てきます。そんな時、「買わない方がいい」と伝えることができるかどうか。

麻野耕司『NEW SALES 新時代の営業に必要な7つの原則』(ダイヤモンド社)
麻野耕司『NEW SALES 新時代の営業に必要な7つの原則』(ダイヤモンド社)

顧客の「理想→課題→価値→方法」という一連の物語に寄り添うことが「ストーリー営業」です。「ストーリー営業」を極めるなら、物語がマッチしない場合には営業担当者が自ら、それを伝えるべきでしょう。

本当の意味で、「ストーリー営業」を実践できるようになれば、あなたが顧客から断られることはなくなります。なぜなら、顧客にとって必要ではない商品・サービスの場合には、断られる前に、営業担当者が売り込みを見送るからです。

ドクターは患者に、服用する必要のない薬は処方しません。同じように、優れた営業担当者は、顧客にとって必要のない商品・サービスを売り込んだりはしません。

「ストーリー営業」を極めるなら、定期的にこう自分に問いかけてみましょう。
「これまで自分から、顧客に導入の見送りを提案した案件はいくつあっただろうか」

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