例えば教育研修の営業なら、「教育研修の投資対効果が最大化している状態」を「理想」として定めます。その上で、「研修で学んだことが現場で活かされていない状態」を「課題」に据え、「参加者に研修の内容が深く落とし込まれ、現場で実践できる」ことを「価値」として提示します。

そのために必要なのが「双方向の議論の場を提供する教育研修プログラム」という方法だと提案することが「ストーリー営業」です。

「ビズリーチ」のテレビCMには営業の極意が詰まっている

商品やサービスの説明から始まる「プロダクト営業」や、「課題」を顧客に質問する「ソリューション営業」に慣れ親しんだ人ほど、営業担当者が顧客に「理想」や「課題」を提案することから始まる「ストーリー営業」に戸惑うかもしれません。

そこで発想を転換するために有効なのが、自社の商品・サービスのテレビCMの絵コンテを、試しに営業担当者が自分で描いてみる、という方法です。

急成長した転職サービス「ビズリーチ」のテレビCMを思い浮かべてみましょう。

【社長】どうせまぁ、大した候補はいないんだろう(課題)
【社長】これはすごい経歴だ。即戦力じゃないか。こっちはライバル会社。これも、これも、これも……。いったいどうしたんだ(理想)
【社長】おい、君、いったいどうしたんだ?

【部下】ビズリーチ!

【ナレーション】中途採用でも優秀な人材に出会えます(価値)
【ナレーション】即戦力採用ならビズリーチ(方法)

たった30秒のテレビCMですが、「課題」→「理想」→「価値」→「方法」というストーリーを見事に顧客に思い描かせることができる内容になっています。

売れる商品CMに描かれる「理想→課題→価値→方法」

ストーリー営業が有効なのは、BtoB(企業間)の営業の現場だけではありません。BtoC(消費者向け)でも、商品・サービスが高額ならストーリーをうまく活用した訴求が有効です。

安い商品・サービスの場合、顧客は情報さえあれば判断できますが、高額になれば、それだけで買うか否かを決めることはできません。その商品・サービスによって実現される「理想」や解決できる「課題」までセットで提案して、顧客のモチベーションを高めていく必要があります。

BtoC(消費者向け)では、急成長したパーソナルジム「ライザップ」のテレビCMでも、「理想」と「課題」を提起させる流れになっています。こちらはトレーニングする前の姿(課題)を見せた後で、トレーニングした後の姿(理想)を見せ、「結果にコミットする」という「価値」を提示しています。