どうでもいい動画は片手間で、本当に好きな動画はじっくりと

「(切り抜き動画や倍速視聴で見るのは)あらすじだけ押さえればいい動画。好きとか見たいとかじゃなくて、話題についていければいいから」と先ほどの大学生は話す。彼は、そのような動画をスマホの小さな画面で片手間に見る。「全部倍速なわけじゃない。好きな声優のYouTubeはPCとか大きな画面でゆっくり楽しんで見る」。

無料のYouTubeやTVer、TikTok、定額制のAmazonプライム、Netflix、Huluなど、現代は動画コンテンツにあふれている時代だ。若者たちは忙しく、いつも時間に追われている。時間はコストであり、時間に関しても効率の良さ、つまりタイムパフォーマンスの良さを重視する傾向にあるのだ。

スマホに表示されたストリーミングアプリのアイコン各種
写真=iStock.com/egadolfo
※写真はイメージです

無料であらすじのわかる「切り抜き動画」や「ファスト映画」は、お金的にも時間的にも最高のパフォーマンスというわけだ。

ただし、若者はすべて「切り抜き動画」や「倍速視聴」で見るわけではなく、前述のように好きなものはゆっくり楽しんでいる。「切り抜き動画」で気に入った動画は元の動画を見るし、「ファスト映画」で気になった動画をレンタルして全編を見たこともあるという。

その大学生は「(ファスト映画は)別に全編見られるわけじゃないし、違法じゃないですよね?」と疑いもしない様子だったが、実際は著作権法違反であるのは前述のとおりだ。切り抜き動画を見すぎて、ファスト映画にも違和感を持たなくなっているのであれば問題だ。積極的な啓発活動や学校でのリテラシー教育が求められるだろう。

これほど動画を短時間で消費する方法があふれている今、等倍かつフルサイズで見てほしいというのは、ある意味、作り手側の都合にすぎないのかもしれない。フルサイズを見てほしいなら、見たくさせるような動画を作る必要があるのではないか。

【関連記事】
ソース不明の陰謀論で再生回数を荒稼ぎ…急増する「歴史系YouTuber」に決定的に欠けている視点
アマゾンが7年ぶりの赤字に転落…なぜIT大手で「想定外の業績悪化」が次々と起きているのか
「4630万円を持ち逃げする人」は再び現れる…若者が未来を信じられない日本でこれから起こる怖いこと
3日間しか生きられなかった娘のために…秋田の「洗車ユーチューバー」がプロの技を惜しまず教える本当の理由
「ワイン離れが止まらない」フランス人がワインの代わりに飲み始めたもの【2021上半期BEST5】