YouTubeショートやTikTokでさらに拡大

このように、切り抜き動画が流行している理由は、収益につなげやすいことが大きい。作成者にとっては編集するだけで収益が得られ、元の動画投稿者にとってもチャンネルの宣伝になり収益も手に入るので、お互いにメリットが大きいのだ。切り抜き動画は関連動画としてレコメンドされるため既に人気ジャンルとなっており、ある程度の再生数が期待できることも始めやすい理由だ。

なお、そもそも切り抜き動画が成立するのはYouTubeだけだ。「Content ID」という著作物を検出する仕組みが実装されており、著作権者が収益を得られる仕組みがある。これはYouTubeにアップロードされた動画のみが対象で、他のプラットフォーム上に投稿された動画の切り抜きは著作権侵害に当たるリスクがある。

また、YouTubeショートやTikTokなど、YouTubeの切り抜き動画を見られる環境が整っていることも大きいだろう。YouTubeショートは60秒までの短い動画が投稿できる機能だ。不特定多数のユーザーにリーチするため、投稿することでチャンネルや動画を知ってもらいやすくなる効果がある。

最大10分の動画を投稿できるTikTokでも、切り抜き動画は人気のジャンルだ。「#切り抜き動画」は5億9000万回、「#切り抜き」は4億回再生されており、ここで切り抜き動画を見るユーザーも多い。

切り抜き動画はメリットばかりのようだが、悪意を持って恣意しい的に編集されたり、本来の意図と異なる不適切なテロップがつけられたりして、ブランドを毀損きそんされるリスクもある。見る側もそういったリスクを理解し、誤情報にだまされないよう注意が必要だ。

20代男性の5割以上が「倍速視聴」経験あり

若者が効率よく動画コンテンツを見たい時に利用するもう一つの方法が、再生速度を1.5倍や2倍にする「倍速視聴」だ。

クロス・マーケティングの「動画の倍速視聴に関する調査」(2021年3月)によると、動画の倍速視聴について「経験あり」という回答は全体では3割に。特に20代は他の年代に比べて倍速視聴経験者の割合が高く、特に20代男性は54.5%と、半数以上が動画コンテンツを倍速で視聴したことがあった。若者において、倍速視聴はもう当たり前なのだ。

スマホで動画を視聴する女性
写真=iStock.com/oatawa
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倍速視聴したいコンテンツは、「ドラマ」「ニュース・報道」「バラエティー」「映画」「YouTuberの企画動画」など幅広い。地上波のリアルタイム放送だけではこうした需要に応えられないため、テレビ各局はネットでの番組配信サービスにも力を入れている。

動画コンテンツを倍速で視聴することに対する意識は、20代女性では「自分の好きな速度で見られるので、自由度が上がると思う(38.2%)」がトップだった。一方、60代男性では「テンポが速すぎて内容がよく理解できないと思う(36.4%)」「倍速だと動画の世界観が損なわれると思う(20.9%)」が多く、ネガティブな回答が多くみられた。