「米中対立、ウクライナ侵攻、ゼロコロナ」の三重苦

しかし、2018年以降は米中の対立が激化し、半導体やスマートフォンなど世界のサプライチェーンが大きく混乱した。サプライチェーンの再編により企業のコストは上昇した。それに加えてウクライナ危機の発生を境にドイツなどの欧州各国がロシアへのエネルギー依存脱却を急がなければならない。金融、経済制裁によってロシアと西側諸国が分断され、世界経済がブロック化し始めた。その結果、世界的に原油や天然ガスなどのエネルギー資源価格が高騰している。

特に、石油化学製品やガソリンの原料であり、あらゆる経済活動に欠かせない原油価格の上昇は、世界の企業の事業運営コストを急激に押し上げる。ウクライナからの供給が寸断されたため、小麦などの穀物価格も上昇が鮮明だ。さらに肥料の供給も寸断され、世界的に食糧危機の懸念が急速に高まっている。

巨大な石油化学工場の背後で沈む夕日
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それによって韓国の輸入物価は跳ね上がった。さらにはゼロコロナ政策によって中国の生産活動や物流が停滞したため韓国では現代自動車がブレーキシステムなどの部品を調達できないなど、モノの不足も深刻化している。その結果として、貿易収支が赤字に転落した。経営体力のある韓国企業は米国への直接投資を積み増すなどして、より多くの需要が期待できる市場で半導体や車載用バッテリーなどの供給体制を強化しようとしている。

かつての“お得意様”が今は競争相手に

今後、韓国の貿易収支は赤字傾向をたどり、経済成長率の低下と物価の高騰がより鮮明となるだろう。米欧などで金融政策が大転換されることにより、資金流出の懸念も高まる。輸出面において中国の需要はさらに落ち込むだろう。

2022年の中国経済の成長率はゼロコロナ政策や不動産バブル崩壊、IT先端企業の締め付けなどによって3%程度に落ち込む恐れが高まっている。ゼロコロナ政策の長期化を恐れ、中国からインドやASEAN各国に流出する資本が増えている。米中対立の先鋭化、台湾海峡の緊迫化懸念も高まる。

他方で、半導体など成長期待の高い先端分野において中国企業は製造能力の向上に取り組む。メモリ半導体、バッテリーなど中国と真正面から競合する製品を輸出してきた韓国企業にとって中国は顧客から競合相手に変質している。産業補助金による工場建設や研究開発の支援、土地供与などによって韓国企業と中国企業の固定費負担の構造は決定的に異なる。韓国企業の輸出競争力は低下するだろう。物価高騰によって米国の個人消費が徐々に鈍化することも韓国の輸出にマイナスだ。