年上部下に認めてもらえず大事な会議にも呼ばれない…

そして今度は商品管理部へ異動して管理職に就任。実績が認められての昇格だったが、当時まだ30代半ば。よその部署からいきなり上司として異動してきた西野さんに対し、「ベテランを差し置いてなぜあの子が上司に」という声も上がったという。

撮影=遠藤素子

特に年上の部下には上司と認めてもらえず、大事なミーティングに呼ばれないなど、蚊帳の外に置かれることもたびたび。だからといって落ち込んでばかりもいられない。西野さんは「そっちがその気なら1人でできる仕事だけやろう」と気持ちを切り替えたが、それは同時にマネジャーという役割の放棄も意味していた。

「会社にいたくなかったのか、この頃は1年で30回以上も外部セミナーに行っています。今思えば、環境や相手のせいにしてマネジメントから逃げていたんですね」

“やさぐれマネジャー”が部長に

そんな“やさぐれマネジャー”だった西野さんを見かねたのか、1年後、上司が古巣のマーケティングの新規獲得チームに戻れるよう取り計らってくれた。部下が若手ばかりだったことも幸いし、西野さんはここで初めてマネジメントの面白さを知る。

いちばん役に立ったのは新人時代の苦い思い出。「こういう上司は嫌だな」と感じていた自分を思い出し、その上司を反面教師として逆の行動をとるよう心がけた。

指示するだけでなく自ら動く。チームのあるべき姿をメンバーと一緒に模索する。変えたいことがあれば慣習に縛られず実行する。ミスがあっても部下のせいにするのではなく自分が責任をとる――。そう行動するうち、自分らしいマネジメントスタイルが少しずつ見えてきたという。

だが、順風満帆なキャリアとは裏腹に、事業は成熟期を迎え業績も伸び悩んでいた。他の通信販売ブランドやナチュラルオーガニックブランドが台頭するなか、市場でのオルビスのプレゼンスが低下。価格勝負の通販事業を脱却し、スキンケアを中心としたビューティーブランドに生まれ変わることが求められていた。同時に「オルビスユー」についても、会社はリブランディングの象徴とし、初のリニューアルを決定した。

西野さんは再び商品企画部に、今度は部長として戻ることになる。

「女性部長の前例があまりなかったので、正直、なりたくないと思っていました。『課長のままでいいです、それで部長と同じぐらい働きますから』と言ったのを覚えています。でもよく考えたら、断る明確な理由もなかったんですよね」