なぜ綿引氏は反対の声を上げたのか
LIXILでは事実上のオーナーが会社から離れた後、コーポレートガバナンスを徹底的に見直し、今に至っている。足元は不安定な株式市場の影響を受けているが、同社の株価は2021年9月に上場来高値を更新した。現在、同社で取締役会議長を務めるコニカミノルタ取締役会議長の松崎正年氏は取材で、「LIXILの歪んだコーポレートガバナンスを司っていた人々が一掃され、焼け野原のような状態になっていたから2年半で健全化することができた。それが株価にも反映されているのだろう」と語る。
ちなみに東芝の取締役選任議案に反対した綿引氏は東芝の社外取締役を務める傍ら、2021年6月の株主総会でLIXILの社外取締役にも就いている。拙書は2018年から2019年の出来事を描いているので、執筆する上で綿引氏には取材をしていない。
しかし綿引氏がメディアの取材にわざわざ応じ、「東芝の取締役選任議案には問題がある」とあえて声を上げているのは、LIXILの取締役会メンバーとして、愚直に健全なコーポレートガバナンスを追求している経験が背景にあるからだと確信している。