恨みを持つ自分を責めないで
親への怒りは、親への思いが薄いから生じるのではありません。記憶への対応が十分ではなかっただけのことです。「親への恨みを止められない」と自分を責める必要はないのです。
また、「記憶(恨み)」は薄らぐことはあっても、消去することはまず難しいと考えてください。上手に「上書き」するには、大変な時間と手間がかかり、よほど運に恵まれるか、腕の良いカウンセラーやセラピストのサポートがないと、なかなか達成されないでしょう。
恨めしい記憶を落ち着かせる唯一の対処法とは
ネガティブな記憶はあれこれいじるよりも、自分の関心を他にそらしてしまうほうが得策です。具体的には、親と距離を取る、親子以外の他の人間関係を充実させる、楽しい趣味に没頭する、などです。親関係の刺激が入ると、どうしても記憶にアクセスしてしまいます。その頻度を下げることで、記憶の棚に向かう回数も減らせるでしょう。と同時に、日々の生活の中で、ご自身の疲労ケアに努めることは大前提です。
Fさんはカウンセリングを進めるうちに、私が説明するメカニズムを理解し、体調管理、特に睡眠を第一に生活してみました。すると、次第に気持ちが落ちつき、お母さんにもあまり振り回されなくなったといいます。
さらにそのうえで、自分にとって大切なことは、お母さんのことよりも、子どもとの関係だと気づいたようです。今は子どもに安心してもらうためにも、自分ケアということを忘れないように生活しているそうです