インドの発展は米国にとっても決定的に重要

台湾海峡の緊迫感が高まる中で来日したバイデン大統領は、台湾の防衛を明言した。米国は、IPEF創設やクアッドによるインド太平洋地域でのインフラ投資支援の強化も明言した。それは、ウクライナ危機のような惨事を繰り返してはならないという米国としての危機感の裏返しといえる。

米国としては台湾を含めたアジア地域の安定に細心の注意を払いつつ、サプライチェーンの対中依存を低下させ経済成長を実現しなければならない。そのために、クアッド加盟国であり、労働コストが低く、中長期的な人口の増加も期待されるインドにデジタル家電などのサプライチェーンを整備することは米国経済の安定と覇権の維持に決定的に重要だ。

米国以外の西側諸国もインド太平洋地域の安定により大きなエネルギーを注ぎはじめた。昨年、英国は最新鋭の空母“クイーン・エリザベス”をインド太平洋地域に派遣し、日米との共同訓練を行った。ドイツはフリゲート艦の“バイエルン”をアジアに派遣し東京にも寄港した。欧米各国は安全保障体制の維持と強化のために台湾海峡を含めインド太平洋地域の安定に向けた取り組みを強めるだろう。

2021年4月19日、コロナウイルス症例が急増する中でも活発に活動するインドラージャスターン州・ビーワルの人々
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世界経済の供給基地として重要性が増している

足許、ウクライナ危機が長期化するとの懸念の高まりによってリスク回避に動く企業経営者や投資家は一段と増えている。空母の運用能力の強化などに財政資金を注ぎ込む習政権への警戒感は高まらざるを得ない。ゼロコロナ政策が長期化する展開も不安材料だ。長い目で見ると、それらは中国経済に大きなマイナス効果となるだろう。成長の限界を迎えた中国から海外へ、ヒト、モノ、カネの流出が増える。

他方で、世界の企業は安価かつ豊富な労働力の確保、地政学リスクの分散、供給網の安定性向上を目指してインドへの直接投資を増やすだろう。世界の供給網の心臓部としてのインドの重要性は急速に高まると予想される。

それに加えて、消費市場としてのインドの成長期待も高い。IMFによると中国の1人当たりGDPは1万2359ドルだ。それに対して、インドは2185ドルだ(2021年、名目値)。ベトナム、インドネシア、マレーシアなどASEAN地域への直接投資も積み増されている。