日本は直接投資の強化を急がねばならない
ただし、インドが米国など主要先進国と完全に利害が一致しているわけではない。インドはロシアから兵器を購入している。割安なロシア産原油の輸入も続けている。それは中国との国境紛争リスクへの対応や国内のエネルギー需要などを満たすために簡単には手放せないだろう。その状況下、わが国はインフラ整備支援などをより積極的に提案して、インドとの関係を強化しなければならない。世界的な供給制約が深刻な状況は当面続く。
インドが脱炭素を進めて人々のより良い暮らしを実現するために、効率的な火力発電システムや上下水道、道路、鉄道の整備などでわが国が強みを発揮できる部分は多い。わが国企業が直接投資を増やすことによって、自動車や工作機械などの分野でインド企業の技術移転が進み、工業化が加速するだろう。
それと同時に、容易なことではないが、わが国はTPPへの米国の復帰を求めるなど、自由資本主義の価値観に基づいた多国間の経済連携強化に取り組むべきだ。長い目で考えた時、そうした取り組みが、わが国が自力で経済の実力を回復するために不可欠だ。