もし台湾が本当に侵攻されたら…

生産年齢人口の減少による労働コストの上昇も加わり、各国企業にとってのチャイナリスク(中国で事業を続ける結果として、想定外に事業運営にマイナスの影響が生じる恐れ)は急激に高まった。中国でビジネスを行う企業にとってゼロコロナ政策の失敗リスクは軽視できなくなった。

追い打ちをかけるようにして、ウクライナ危機が発生した。エネルギー資源や食糧などの価格上昇は、中国の経済成長率を押し下げる。中国による台湾侵攻の懸念も増している。

万が一、台湾侵攻が起きれば、世界の半導体供給の心臓部である台湾が大混乱に陥ることは避けられない。世界全体で半導体が枯渇し、スマートフォンや自動車などのモノが作れなくなる。台湾積体電路製造(TSMC)から軍事用の半導体を調達している米国の安全保障にも無視できない負の影響が及ぶ。

艦載機、空母建設…軍事力に力を入れる中国

そうしたリスクを回避するために、時間の経過とともに中国からインドなどに生産拠点などを移管する企業や投資家が増えている。その状況下、米国政府は中国の台湾侵攻への危機感を一段と強めている。

その一つの要因として、沖縄県の南方海洋において中国海軍の空母“遼寧”が艦載機の発着艦を繰り返していることは大きい。遼寧はスキージャンプ台方式で艦載機を発進させる。さらに、中国海軍は艦載機のより効率的な運用を可能にする電磁カタパルトを搭載した新型空母の建造を進めていると報じられている。

中国の空母打撃力が急速に強化される可能性は高まっている。それによって台湾海峡の緊迫感はさらに高まり、台湾の半導体生産能力に依存する米国や主要先進国の経済、さらには安全保障に無視できない負の影響が及ぶ。そうしたリスクを低減するために米国は台湾や韓国の半導体メーカーに対米直接投資を求めている。