※本稿は、上市秀雄『後悔を活かす心理学』(中公新書)の一部を再編集したものです。
大学生は後悔したときにどのように対処してきたか
後悔はそのままにしておくと、精神のみならず体調にもよくない影響を及ぼす。悲観的な考え方をする人は、楽観的な人よりも、病院の診察回数が多い、感染症にかかりやすい、免疫機能の働きが弱いなどのように、健康状態が悪い傾向がある。このことは、後悔などのネガティブな感情を持っている人にも関係する可能性が高い。それでは後悔に対して、どのように対処すればよいのだろうか。
実際に経験した後悔に対する有効な対処法について、大学生を対象にした研究を紹介する。
今までの人生において、最も後悔した対人関係に起因する後悔(けんかした、人を傷つけた、約束を守らなかったなど、自分以外の相手がいる場合の後悔)、および一般的な後悔(やるべきことをやらなかった、○○をした/しなかったなど主に自分自身に影響する後悔)それぞれについて、後悔した出来事の内容、行動選択(行動したために生じた後悔なのか、それとも行動しなかったために生じた後悔なのか、どちらか一方を選択)を答えてもらった。
対人関係の後悔に対する一番の対処法は「謝罪」
そしてそれぞれの後悔した出来事に対して、その出来事が起こった当時の後悔の程度(0%:全く後悔しなかった〜100%:非常に後悔していた)、後悔対処法(その後悔に対してどのような対処をしたのか)、今現在の後悔の程度(0%:全く後悔していない〜100%:非常に後悔している)について回答を求めた。
その結果の一部を図表1に示す(数値は平均値)。四角で囲まれたところが、役に立った対処法である。
対人関係の後悔に対する対処として有効な方法は、行動した後悔(けんかした、人を傷つけた)と行動しなかった後悔(約束を守らなかった)の両方とも「謝罪」であった。何らかの対人関係から生じた後悔を減少させるためには、相手に謝罪することが必要となる。
行動した後悔については、「何もしなかった」としても後悔は小さくなっている。時間にまかせてしまうことも、後悔を和らげるひとつの方法といえるだろう。