万能な対処法がないからこそ臨機応変に使い分ける

これらのことをまとめると、後悔対処法には、心を落ち着かせ、ダメージや後悔が大きくならないようにするために有効な方法と、後悔を低減させ、長期間続かないようにし、適応的行動を促進することに有効な方法の2つがあるといえる。これらの対処法の関連性は、図表3のようなプロセスになっている可能性がある。

非常に大きな後悔を感じるような出来事の場合、ネガティブな心理的対処→ネガティブな行動的対処→ポジティブな心理的対処→ポジティブな行動的対処という順番で行うとよいだろう。

たとえば、今後の人生に影響を及ぼすような失敗をしてしまったとき、その起こってしまったことに対して自分は悪くないと自己正当化をしたり、その出来事の解決を先延ばしにしたり、その出来事を考えないようにしたり(ネガティブな心理的対処)、感情を爆発させたりする(ネガティブな行動的対処)ことで、自分自身の心を落ち着かせ、事態がさらに悪化することを防ぎ、後悔が長く続かないようにすることが期待できる。

上市秀雄『後悔を活かす心理学』(中公新書)
上市秀雄『後悔を活かす心理学』(中公新書)

その後、心やその事態がある程度落ち着いてから、今回の結果を受け入れ、反省し(ポジティブな心理的対処)、今後同じようなことにならないように自分のスキルや判断力を高めるような努力(ポジティブな行動的対処)をすることで、後悔をより低減させ、自分自身の行動をよりよいものに改善することもできるだろう。

それほど大きな出来事ではなく、あまり深刻ではない後悔の場合、ネガティブな対処は適応的行動をあまり促進させないため、同じような過ちが繰り返されるかもしれない。あまり深刻ではない後悔の場合には、ポジティブな対処をするほうがよいといえる。

ある後悔に対して「絶対に○○という対処をすればよい」ということはない。どのような後悔にも適用できる万能な対処法もない。どの対処法を用いればよいのかは、後悔している人の心理状態や置かれている状況などで変わるのである。

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