「子どもに負担をかけたくない」という依頼者
高齢化に伴い、親子で契約をする人も増えてきた。
70代の子と90代の親の場合、子が契約のキーパーソンとなって、もしも親より先立つことや、自分が認知症になったときの場合に備えて、契約を結んでおくという。これはこれからの時代の切実な問題である。
80代の親と50代の子の親子関係と、70代の親と40代、30代の子の親子関係は大きく意識が違うことを、ここでも聞いた。
40代以下の世代では、親の介護をして看取る意識がかなり薄くなっている。世代間の意識の違いがまたこれからの家族の問題を変えていくだろう。
りすシステムで契約をすると、「私のおぼえがき」を作成し、公正証書による契約へと進む。「私のおぼえがき」を基に、契約者の希望に沿ったサポートがされる仕組みだ。ペットの処遇やデジタル記録の消去、死後の形見分けまで、きめ細かいサポートは多岐にわたる。
同法人のホームページを見ていたら、「死後事務の内容」でライフスタイルや価値観に応じて自由に追加できるという「自由選択型死後事務」の欄に、「死後もお世話になった方へのお祝いや香典などの社会参加の代理・代行」とあったのが気になった。
依頼者の孫にランドセルを贈ることも…
これについて杉山氏に聞いてみると、「ご自身が亡くなった後に、お孫さんにランドセルを贈る方がいらっしゃいました。残念だけど、自分はそれまで生きていられないからと。私どもで代行して、お孫さんの入学時に『おじい様から、これでランドセルを買ってくださいと、お渡しするように頼まれております』とお祝い金をお送りさせていただきました」と語り、さらに続けた。
「他には、ご自身の三十三回忌までを頼まれた方もいらっしゃいましたね。この方はお子さんがいらっしゃらない方でしたが。もうすでに私どもで十三回忌のご供養をさせていただいております」
「子どもと絶縁している契約者さんで、このサービスを利用して、死後に子どもと和解につながるようなお手紙などを託された方はいらっしゃらないですか?」と聞いてみると、「それはないですね。でも、そういう使い方もあるんですね。ぜひ、このサービスを、そういうふうにお使いいただけると嬉しいです」という答えが返ってきた。
絶縁した娘に遺した「恨みの手紙」に書かれていたこと
絶縁している親で、子どもとの和解に歩み寄る努力をしている人の話をほとんど聞かない。最期まで子ども側が歩み寄るのを待っているようだ。
死後に、絶縁した娘宛てに長い手紙を遺した母親がいた。その手紙は彼女が娘から受けた傷がどれほど深いものであったかを訴える、恨みの手紙だった。