昨今、「自己責任」という言葉が乱用、誤用されている感があったが、「自己責任で死後の準備をする」という姿勢に潔さを感じ、共感を覚えた。
代表理事の杉山歩氏によると、契約者は独身、または子どもがいない夫婦が多いという。子どもがいて契約している人からは、子どもがいても海外など遠隔地に住んでいるために、もしもの時に間に合わない場合に備えて、一時的なつなぎの役割を求められることもある。
家族がいても頼りたくない、迷惑はかけたくないという人。生きている間は迷惑をかけないように、こちらでお世話になりたいが、死後のことは子どもに頼みたいという人が多い。
それを聞くと、もしかしたら子どもとは不仲なのかもしれないが、それほど深刻な断絶ではなく、子どもとの関係にまだ望みが見える人たちのような気がした。
子どもと絶縁している契約者の「死後」をサポート
だが、中にはやはり子どもと長年絶縁していて、子どもには遺産を一切遺したくないという人もいる。子どもから暴力を振るわれた、虐待されたことを理由に絶縁しているというケースもある。子どもの連絡先を知らないという人も。
親の世話をしない子どもに遺産を一切遺したくないと親が思っても、わが国の法律で子には遺留分の相続権は保障されているから、そうはいかないのである。いくら親子が不仲で、断絶していても、それだけでは相続不適切とは認められない。そうした子どもと絶縁している契約者の生前から死後まで、同法人がすべてサポートすることになる。
その場合、契約者の希望により、同法人が遺言執行人として、契約者が亡くなった時は葬儀から納骨まで、さらに死後の諸手続き、自宅の片づけ、家の売却まですべて済ませてから、遺留分減殺請求について子どもと連絡を取り、子どもの意向を確認する。
そして要求があれば、遺留分を子どもの口座に振り込むようなこともあるという。
血を分けた親子がここまで揉めて、死後まで完全に断絶することに、殺伐としたものを感じるが、現実に起きている家族間の壮絶な争いを思うと、こうした機関の存在の必要性を改めて感じるのであった。
いろいろな家族を取材して感じるのは、親と子のうちの一人との関係がこじれた時に、親は子のきょうだいや親族を自分の味方につけて、その子どもを孤立させることが多いということだ。
このように法人の「契約家族」のサービスに頼らない家庭が必ずしも円満というわけではなく、一人の子と絶縁関係にあっても、他の子どもに頼り、死後の相続まで任せることで、外部にはその家族の亀裂が見えてこないだけなのかもしれない。