「足し算」と「掛け算」で問題点をあぶり出す
「1日のピザの消費量は世界で何枚?」
「日本全国に電柱は何本ある?」
この頃よく耳にするフェルミ推定とは、こうしたつかみどころのない物理量を短時間で概算することである。コンサルティング会社の入社試験で問題解決力を試すために使われ、最近は地頭力を鍛えるトレーニング方法として注目されている。前述の「足し算の分解」「掛け算の分解」という考え方もフェルミ推定で必要とされる分析手法の一つだ。
世界のピザの消費量をフェルミ推定するなら、まず食文化の異なる地域に分類し、次に人口×1人あたり消費量に因数分解して考える。まさに「足し算の分解」と「掛け算の分解」の話であることがわかるだろう。
次に、より実際の業務に近い問題について、以下に「足し算の分解」と「掛け算の分解」を用いた解決方法を検討してみよう。
1カ月に平均して30台のオフィス機器を販売している営業所があるとする。営業方法はセールスマンによる飛び込み営業が中心だ。
販売台数はずっと横ばいで推移しているが、商品力や潜在的な市場規模を考えると、30台という数字は満足のいくものではなく、もっと販売台数を増やさねばならない。この営業所の所長として着任したら、どのように解決策を考えていけばよいだろうか。
最初のプロセスは「足し算の分解」である。エリア別、担当者別などいくつかの切り口が考えられよう。
そうした分類を行っていくうちに、尖った傾向を示す切り口が見つかった。それは「顧客の購入経路」で、新規顧客開拓、すなわち飛び込み営業による販売が7台であるのに対し、既存客へのアフターフォローから発生した販売が14台、来店等顧客からのアクセスによる販売が5台、紹介による販売が4台だった。飛び込み営業に資源を集中しているのに、実際はアフターフォローからの販売台数のほうが大きかったわけである。
次に、アフターフォローによる受注数について「掛け算の分解」をすると、既存顧客×受注率という式になる。そして営業マン別に切り分けたうえで受注率を算出してみると、有意に高い数値を示す者は販売後、故障やクレームがなくとも自主的に顧客訪問していることがわかった。
以上の分類から、この営業所では飛び込み営業に費やす時間を減らし、その分を既存顧客のアフターフォローに投入することにした。その結果、飛び込み営業による販売は減少したものの、アフターフォローによる販売と紹介販売が増加し、全体として前年を上回る販売台数を継続して達成するようになった。