「『第二の文革』ですって? 全然違う。笑っちゃうわ。今の中国でそんなことが起きるわけがない。それは日本人の願望ではないでしょうか? 日本人は中国で『第二の文革』が起きてほしい、また中国社会が混乱に陥ってほしいと思っているのではないですか?」

この女性はしばらくの間、笑っていた。大げさに笑っているのではなく、本当に驚いて笑っている様子だった。別の人たちも、同じく「そんなことはない」「それはいい過ぎですよ」という。「既得権益がある富裕層の間では、何が起きるかわからない、どこで仕返しされるかわからないと思い、留学している子どものところに資産を移すとか、リスクヘッジを急いでいる人もいることはいます。でも、特別に目をつけられている業界の人であったり、カリスマ的な人気のある人以外は大丈夫ですよ」と語る人もいた。

建国当初の公平な社会を目指そうとしている

別の女性はこんな話をしてくれた。

「中国は文革の頃に戻るのではなく、1949年の建国のときに、少しずつ時計の針を戻そうとしているのではないか、と直感しています。つまり、計画経済の時代に戻っていくという意味です。この十数年、政府は国民にあまりにも自由にやらせすぎて、経済は発展したけれど、社会には不公平が生まれ、あらゆる面でバランスの悪い格差社会になってしまいました。それを正して、建国の理念に掲げたような、公平な社会にしていくことが究極の目的ではないでしょうか。

北京の中心業務地区
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お金を稼ぎ過ぎた企業は寄付をして社会に還元する。これは当たり前のことだと私は思います。これからきっと、政府の管理が及ぶ国有企業が増えていくと思います。

最近では公務員試験の受験希望者も増えていると聞きます。中国でかなり公平なのは高考(ガオカオ=大学統一入学試験)と国考(グオカオ=国家公務員試験)だからです。

民営企業は一時的にお金が儲かるかもしれないけど、何が起こるかわからない。それならば、給料があまり高くなくても、安定した職に就きたいと考えている人が多いようです。噂では、政府が『共同富裕』を何十年かかけて進めていく上で、これから安月給だった公務員や労働者の所得を上げていくという話もあります。かなりの職業の収入格差がなくなる、平等に近い社会です。そのため、公務員を志望する人が増えているのかもしれません」