公務員試験の受験者は157万人→212万人に
その女性と話したあと、2021年11月末、毎年行われる中国の国家公務員試験の受験者数が過去最多の212万人を超え、倍率は68倍になったという報道があった。公務員試験の受験者は毎年増えているが、2020年は約157万人だっただけに、急激な公務員人気の高まりが注目された。
ネット上には「やはり鉄飯碗こそ最高だ」という書き込みもあった。鉄飯碗とは「割れない鉄でできたお椀=絶対的に安定している」という意味で計画経済時代によく使われた言葉だ。その女性は続ける。
「中国はたった一晩で変わる国です。中華人民共和国が建国される1日前、つまり1949年9月30日まで、中国には日本と同じような私立学校もたくさんあったのです。のちに大部分が北京大学に移管された燕京大学というアメリカ系の学校も私立学校でした。それが建国後になくなってしまった。
いろいろなことが一夜で変わったのです。あの頃に比べれば、今のやり方はまだましだと思えます。突然変わることを外国の人は『怖い』と思うでしょうが、何事も一気にやることは、逆に公平。例外は決して認められないので。そこまで強制的にやらないと、この巨大な中国は変わることができないのです」
なぜ極端な政策でも中国国民は従うのか
最後に、別の男性はこう語ってくれた。
「なぜ中国で大きな反発が起きていないかというと、政府がこの巨大な国のマイナス面を何とかしてプラスに変えようと努力していることを感じ取っているからです。この国を変えていこうというメッセージは国民も共有している。それがわかっているから、国民はついていっているのだと思います」
共同富裕政策は「社会主義的」だとして、中国の成長を支えたIT関連を始め巨大企業などの競争力を削ぎ、中国経済に大きなダメージを与えるという見方も日本にはある。だが、自由競争の「弊害」として、多くの国民に不満が溜まっているのは確かだ。
もちろん、私に話してくれた人々の声は「外国人(私)に対して」という意味で、ある程度割り引かなければならないのかもしれない。だが、最後に話してくれた男性のように、政府が巨大企業や富裕層に対する不満を汲み取り、格差解消に向けて取り組んでくれている、と前向きに受け取る中国国民は少なくない。そのことを私たちは知っておくべきではないだろうか。