これまで、子どものいる女性はそうでない女性と比べて賃金が低い傾向が続いてきた。しかし、アメリカでは逆転現象がみられるという。拓殖大学准教授の佐藤一磨さんは「最新の研究では、上位10%の高所得層の女性の間では子どものいる女性の稼ぎが大きくなっています。晩産を選択してキャリアを積み、パートナーと同居して育児をシェアすることで労働時間を長く確保する動きがあります」という――。
カレンダーの給料日に赤字で印
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母になることによる賃金ペナルティ

子どもの誕生は、親に大きな影響を及ぼします。

心理的な面からみれば、子どもの誕生は親に大きな喜びをもたらすと言えるでしょう。一方、生活面からみれば、生まれてから数年間にわたって、子どもから目を離せないため、子育てにかなりの時間と労力が費やされることになります。

この影響を受けるのは、圧倒的に女性です。

女性が子育てのために仕事を辞めたり、働き続けたとしても仕事量を抑制せざるを得ないということがたびたび観察されてきました。

この結果として、子どものいない女性よりも、子どものいる女性の方が、賃金が低くなってしまうわけです。

このような賃金低下は、「Motherhood Wage Penalty(=母になることによる賃金ペナルティ)」と言われ、さまざまな研究でその存在が指摘されてきました(*1)

(*1)Viitanen, T. The motherhood wage gap in the UK over the life cycle. Rev Econ Household 12, 259–276 (2014).

最新のアメリカの研究では「逆の結果」が出てきている

日本に住んでいると、子どもを持つことによって女性の賃金が低下するという結果は、実感に近いものがあります。

しかし、最新のアメリカの研究によれば、近年「逆の傾向」が見られる場合もでてきたと指摘されています。

ここでの逆の傾向とは、ズバリ「子持ちの女性の方が賃金が高い」というものです。