2021年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。政治経済部門の第5位は――。(初公開日:2021年7月11日)
「無料のバスツアー専門」という旅行会社がある。どうやって儲けているのか。現役添乗員の梅村達さんは「無料バスツアーの当選者はほぼ100%が女性。有名観光地に立ち寄り、それなりの昼食も出るが、そのあとに必ず立ち寄る場所がある」という――。

※本稿は、梅村達『派遣添乗員ヘトヘト日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。

バスの後部座席からの眺め
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

最安の宿泊先を手配される添乗員たち

日帰りの団体旅行では日本の各地へ出かけ、出発地も各地にまたがっている。出発地が添乗員の自宅から遠く、朝の出発時間に間に合わない場合、添乗員はツアー前日に出発地近くの宿に泊まる。それを私たちは「前泊(前泊)」と呼ぶ。

わが国には大小さまざまな旅行会社があり、各社に独自の企業風土が存在し、仕事のやり方も違っている。ところが、こと添乗員が前泊する宿となると、もののみごとに各社の足並が揃う。基準はただひとつ、宿泊料金が安いことである。

今はインターネットで、宿泊料金を簡単にチェックすることができる。添乗員の前泊場所を選ぶのは、旅行会社のツアーの担当者である。彼ら彼女らは、最安値の宿を探し、予約を入れる。

「前泊」とは打って変わって、宿泊ツアーのほうでは、添乗員もツアーの参加者と同じクラスの部屋をあてがわれることが多い。非常に稀なケースであるが、こんなに良い部屋に泊まっていいのということもあった。

このケースは募集型ではまずなく、社員旅行などの受注型ばかりである。豪華な団体旅行の一行が高級な宿に泊まる。ぜいたくのお裾分けとして、添乗員にも上質の部屋が回ってくるというわけだ。

高級な宿に泊まるツアーでも、募集型だとそのようなおいしい話はまずない(例外的に1回だけあった)。値段の張る宿の場合、旅行会社は費用の問題などで添乗員を同宿させないことが多い。

その場合には、ぐっとグレードの落ちる旅館かホテルへ行く。旅行会社は極力、費用を抑えようとする。