自動運転、半導体の設計…あらゆる可能性が広がる

ソニーグループ(ソニー)は、人工知能(AI)の開発で着実に成果を上げているようだ。最近、コンピューター・レーシング・ゲームの“グランツーリスモ”で、ソニーが開発したAIの“Gran Turismo Sophy(以下、GTソフィー)”は、世界トップのドライバーに勝利した。レーシングゲームでは、瞬時に千変万化のごとく環境が変わる。これまで、人間が開発したAIがダイナミックに変化する環境に対応することは難しいと考えられてきた。

Gran Turismo Sophy
写真=「Gran Turismo Sophy」Webサイト
Gran Turismo Sophy

ところが、GTソフィーはそれを実現した。世界全体で加速するAI開発競争において、ソニーがそれなりに成果を上げている証左といえるだろう。今後、ソニーはAIの能力をさらに高め、社会実装を目指す方針だ。AIが人と協調し、いっそうの効率性の向上など新しい価値を提供する時代が近づいている。

これから、自動車の自動運転や半導体の設計、効率的な工場の運営、産業用と民生用のロボットなど、ソニーのAI技術が実装される分野は増える。AI開発は新しい需要創出に無視できない影響を与える。ソニーがAIとモノの新しい結合を増やし、高い成長を実現する展開を大いに期待したい。

代表的なスマホの顔認証システム

ソニーが画期的なAIを生み出した。“GTソフィー”は複雑な状況に瞬時に対応し、より合理的な意思決定を下すことによって、わたしたちを上回る利得を実現した。それは、今日使われている多くのAIと一線を画す。

AIの多くは、ビッグデータをもとにして特定のパターンなどを学習する。それを深層学習と呼ぶ。主な用途の一つがスマートフォンなどの顔認識システムだ。顔認識に用いられるAIは、カメラ内部の画像処理センサで“顔データ”を学習する。具体的には、目、鼻、口の大きさなどのデータを得る。実際に取り込まれた顔データが登録されたユーザーと一致する場合、AIはデバイスのロックを解除する。わたしたちの行動を時系列データとしてAIが学習し、次の動作を予測することも可能になっている。それは監視カメラなどに用いられている。