ほとんどの人は無意識のうちにそうしているため、自分が眉をさっと上げていることに気づいていない。ためしに、観察してみるといい。オフィスなどの公的な場所で初めて顔をあわせた人たちは、「はじめまして」「調子はいかがですか」といった挨拶をしながら、眉をさっと上げているはずだ。

言葉には現われない相手の心理がわかる

自分でも人と会うときにどんなしぐさをしているのか、意識してみるといい。

言葉を使わないコミュニケーションを瞬時にかわしていることに驚くはずだ。そして、自覚してこなかったものの、さまざまなしぐさや態度で、これまで自分がずっとシグナルを送ってきたこともわかるだろう。

眉をさっと上げれば、遠くにいる人にもシグナルを送れる。たとえば、あなたが混雑した会場にいるとしよう。遠くにいる誰かに関心をもったら、眉をさっと上げ、相手からの反応を待ってみよう。

もし相手もさっと眉を上げてきたら、話しかけるといい。相手もあなたに関心をもっているというサインだ。反対に、なんの反応も返ってこなければ、相手はあなたに関心をもっていない。

このように眉をさっと上げるしぐさを利用すれば、相手がこちらに関心をもっているかどうかを判別できるし、脈のない相手からは早期に警鐘を鳴らしてもらえる。

そうすれば、親しくなる気がない相手に声をかけた結果、拒絶されずにすむし、バツの悪い思いもせずにすむ。自分と同様に眉を上げてくれた人にだけ、声をかければいい。

「私は脅威ではありません」のポーズ

2 頭を傾ける

左右どちらかに頭を傾けるのは、「私は脅威ではありません」というメッセージを送るしぐさだ。首の両側には頸動脈があり、頭を傾けると、そのどちらかを相手に見せることになる。

頸動脈は酸素を含む血液を脳に運ぶ経路であり、そのどちらかが切断されれば数分のうちに死が訪れる。だから脅威を感じた人は首をすくめ、頸動脈を守ろうとする。その反対に、まったく脅威を感じない人と会っているときには頭を傾け、頸動脈をあらわにするというわけだ。

「頭を傾ける」動作は、強い〈好意シグナル〉となるため、信頼の置ける人、魅力的な人と思われやすい。また頭をわずかに傾けて近づいてくる男性のほうが、女性からハンサムだと認識されやすい。

同様に、頭をわずかに傾けている女性のほうが、男性から魅力的だと思われやすい。話している相手のほうにわずかに頭を傾けている人は、思いやりのある正直な人に見られやすい。

女性は男性よりも頻繁に頭を傾けるが、男性は、頭をまっすぐにし、相手より優位に立とうとする傾向がある。