「トー横キッズ」という名称のおこり

自称「初代トー横界隈」のバーテンはこう語る。

「僕がトー横にいたのは2018~2019年だったんですけど、都内でオフ会する連中が待ち合わせに使っていたのがTOHO前。あのビルに隣接するバーには、自撮り界隈で有名な人物がキャストとして働いていたり、歌舞伎町と自撮り界隈の癒着というか、関係が深くなっていった感じでしたね。あと、初期メンバーには18歳未満の子が多くて、ホストクラブとかは年齢確認が厳しいから入れなかったのも大きい。結果、遊びに行くならホストより安いし、年齢確認も緩いバーになった。歌舞伎町のバーは24時以降にオープンする店がほとんどだったから、24時まで居酒屋だったり、路上で時間をつぶすというのが当時の流れでしたね」

お金もなく、路上に集まる彼・彼女たちのことを、ホストとその客である風俗嬢やキャバクラ嬢たちが「キッズ」と呼びはじめた。それがトー横キッズ、という名称のおこりだ。

Twitterで「TOHOキッズ」という投稿で最も古いのは2019年の9月17日。令和になって誕生した言葉である。

誘拐事件で人気者になった男

トー横でメディアで取り上げられた事件がある。2021年5月の誘拐事件だ。界隈でも中心メンバーだった当時20歳の男が、トー横に出入りしていた13歳の少女を誘拐したとして、逮捕されたのだ。ふたりはSNSで交流を深め、トー横で会い、関係をもっていたという。男が警察に取り囲まれている様子も撮影され、仲間たちは「あいつは児ポで逮捕!」「誘拐ワロタwww」などとからかう投稿を行っていた。彼らにとってはさほど大事件ではない様子だった。

逮捕された当の本人も釈放後にすぐに、報道された実名をハッシュタグにし、自撮りを中心にした動画を数多くTikTokに投稿した。謝罪もなく、反省の色は一切見られないこの行動。炎上するかと思いきや、投稿のコメント欄には「○○君(男の名前)やっぱりカッコイイ!」「推しです!」「はやくお金稼いであなたに貢ぎたいよ~」「いくらで会ってくれます?」など、ファンの女性たちによる好意的なものが多く見受けられた。そのコメントの多くが、中高生の少女。そう、男は割とイケメンだったのだ。

男はその後、歌舞伎町のバーとコンカフェ(コンセプトカフェの略)で働きはじめる。事件があったことなど一切気にせずSNSの投稿を続け、ファンの女性たちは店に通うようになる。なかには男がSNSにアップしたPayPayのQRコードに、送金するファンもいたという。

男に好意を抱いていたという12歳の少女が、SNSを通して男に好意を伝えると、「好きなら貢いでよ」と金銭を要求されたという。そして少女は数万円を稼ぐ手段として、SNSで援助交際の相手を募り、歌舞伎町のインターネットカフェなどで自身のカラダを売ったという。そんな事情をネットで晒していた。