ゾーニングは意味をなさなくなっている
こうした炎上を防ぐため、見たい人と見たくない人のゾーン(領域)を分ける手法の一つとして「ゾーニング」という手法がある。ゾーニングとは、その名のとおり見たい人と見たくない人のゾーン(領域)を分けてしまうことだ。
実は、千葉県警は今回の一件でゾーニングを意識し実施していた。というのも、「子供はYouTubeを見てくれるはず」という考えから動画をYouTube上のみで公開しており、日常生活で誰でもアクセスできるポスター掲示やグッズの配布といった形を取らなかったからである。そういった点では、普段アニメとの接点がない人や、アニメキャラに忌避を覚える人に対しての一定の配慮はあったと言えよう。
ところが、このゾーニングという手法は、SNSが発達した現代においては、有効性を失いつつある。どれだけ見たい人のみを対象に狭い空間で発信しても、それをひとたび誰かがSNSに上げてしまえば、たちまちあらゆる人がアクセスできてしまうからである。
一人の人格を持つVチューバーはTPOをわきまえる配慮を
そのため、今求められていることは二次元(虚構)のキャラクターであっても三次元(現実)の人間と同じようなTPOに注意することだと言える。Vチューバーはアニメ(画)と異なり、2次元と3次元の橋渡しができる生きた存在だからだ。
今回の動画では、講師として呼びかける児童向けの教育目的の動画に、戸定梨香さんの持つ「記号」であるとはいえ、ヘソを出したミニスカート姿で登場したことは、TPOをわきまえているとは言えなかった。戸定さん側は、次の企画のために警察官姿の衣装も用意していた。今後の活動では、公的機関とコラボするようなフォーマルな場では、その場に適した服装をするといったことが、一人の人格を持つVチューバーにも求められるのではないか。
たとえば企業の採用面接にジーパンではなくスーツを着て臨んだり、お葬式に赤ではなく黒の礼服を着たり、教育者として話す際に、短パンにサンダルよりも、「きちっとした」服装の方が、話の説得力が増すなど、服装も「表現の自由」ではあるものの、私たちは「その場にふさわしい」服装や態度を選んでいる。