自宅療養者に往診で対応するのは非現実的である

新型コロナ上陸から2年がたとうというのに、これら発熱者の移動手段について行政はまったくの無策である。

これは自宅療養の問題にも直結することだが、仮に検査可能な医療機関が保健所から案内されても、その場にたどり着くことが困難な人への対策が講じられなければ、発熱者は検査に到達できない。検査可能医療機関の絶対数を増やすだけでなく、感染対策を施した移送車両を十分数配備しておくなど、発熱者・感染者の移動手段を整備しておくことが、今からでも絶対に必要なのだ。

第5波では「自宅療養」という名の「自宅放置」によって少なくない犠牲者が出た。それにもかかわらず、岸田政権は第6波を前に病床数の確保をうたうものの、あくまでも「自宅療養ありき」を前提として訪問看護や往診体制を整備するなどと言っている。

もちろん発症した人をすべて入院や施設管理にすべきなどとしていたら、欧米のように毎日数万人単位で増加した場合、いくら臨時施設をこしらえても追いつかないではないかとの指摘ももっともだ。その意味では、低リスクの軽症者は自宅療養とされるべきかもしれない。しかしこれらの人に対して往診で対応するのはあまりにも非現実的だ。医師が一軒一軒往診に回るといっても、地域にもよるが1日に10軒行けるかどうか。爆発的に感染者が増えたら、往診のような極めて非効率な対応では絶対的に間に合わない。

マスクをした若い女性の顔
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自宅療養者は外来診療を原則にするべきだ

では「自宅療養者」に対してはいかなる医療介入が妥当であろうか。「在宅医療が非現実的ならばオンライン診療もあるではないか」との意見もあろう。だがこれまで実際現場で診療してきた経験を踏まえると、新型コロナウイルス感染症の場合、症状変化を把握するのはもちろんだが、診療所レベルで遅滞なく胸部レントゲン検査(もちろん可能であればCTが望ましい)を行い、肺炎の有無を確認しておくことは非常に重要だ。在宅医療やオンライン診療ではこの画像診断ができない。肺炎への移行を見逃してしまい、手遅れにもなりかねないのだ。

つまりオンライン診療では「安否確認」以上の効果は期待できないと考えておいた方がいい。しかも通信がつながらなかった場合、たまたま応答できなかったのか、それとも倒れてしまっているのかを確認するためには、やはり現場に行かねばならない。二度手間にさえなり得るのだ。

すなわち私は「自宅療養者」については、在宅医療やオンライン診療ではなく、やはり外来診療を原則とすべきと考える。つまり、発症早期から自宅で動けないくらい状態の悪い人や高リスクの軽症者はすぐに入院、その他の軽症者も原則は施設入所としつつ、やむを得ない事由で保護入所できない人については外来での通院加療とすべきであり、在宅医療やオンライン診療のみでの対応は極力避けるべきという意見だ。

外来であれば必要に応じて検査もすぐに行えるし、抗体カクテル治療なども医師・スタッフの目が十分届く範囲で施行可能だ。当然ながら在宅医療やオンライン診療とは比較にならない対応ができる。また一カ所の医療機関で数多くの患者さんに対応可能だ。