財政的に自立できる自治体が大きく減っている

2021年度の地方交付税交付金の総額は16兆3921億円。それに比べれば、ふるさと納税の6724億円は微々たる金額だ。しかも、2018年には15兆円あまりにまで減少していた地方交付税交付金は3年連続で増額となり、2021年度は新型コロナ対策の名目で5%以上増えた。自治体財政の国依存はむしろ急速に高まっているのである。

ちなみに、地方交付税交付金をもらっていないのは47都道府県では東京都のみ。1718ある市町村のうちもらっていない「不交付団体」は53しかない。2007年には142あったから、数で見ても財政的に自立できている自治体は大きく減っている。

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ふるさと納税制度の導入を決めた第一次安倍内閣では「三位一体の改革」が方針として掲げられ、国庫補助負担金改革、税源移譲、地方交付税の見直しを一体的に行うとされた。だが、最近はすっかり死語になり、地方への権限移譲、税源移譲はまったく議論に上らなくなった。「地方にできることは地方に」という掛け声もまったく聞かれない。むしろ国におんぶにだっこの自治体が増えつつある。

「地方を抱え込む余裕」は国にはない

総務省など霞が関の役人からすれば、権限を地方に移せば、自分たちの仕事が減り、権限を失うことになる。だから、地方分権には取り組まず、自治体を自立できないようにする方向へと進んでいく。

だが、国の財政が隆々としているならともかく、国自身も財政難に喘いでいるのが実態だ。いわゆる「国の借金(国債、借入金、政府保証債務の合計)」は1200兆円を突破している。つまり地方を抱え込む余裕は国にはないはずなのだ。

地方交付税交付金制度は、財政状態が悪くなれば、国が手当てをしてくれるわけで、財政を立て直すインセンティブが働かない。つまり、多くの自治体が国に頼ることばかりを考え、自立しようとは思わないのだ。

「いやいや財政的に自立なんて到底無理です」と真顔で答える首長は少なくない。国の公共事業を頼りに、国会議員に陳情する仕組みは今も変わっていない。

ふるさと納税が、自治体の「自立心」を高めた効果はあるだろう。だが、地方交付税交付金の巨大さに効果を削がれていると言っても過言ではない。地方を再編して一定規模にまとめる「道州制」の議論もいつの間にか雲散霧消した。このままでは、人口減少で税収が減る自治体が続出し、国が支えられなければバタバタと破綻していくところが増えていくことになりかねない。自治体の財政が詰まれば、住民生活を根底から揺さぶることになる。

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