10月31日投開票の衆議院選挙について、岸田文雄首相は「未来選択選挙」と呼んでいる。国際政治学者の六辻彰二さんは「本当に未来を選択するのであれば、保守的な長老議員による成り行き任せの政治をこれ以上続けるべきではない。無責任な公約よりも、候補者の過去の言動を判断基準にしたほうがいい」という――。
衆議院解散、衆議院選挙に向けて、事実上の選挙戦に入る
写真=AFP/時事通信フォト
衆議院解散、衆議院選挙に向けて、事実上の選挙戦に入る=2021年10月14日

日本の投票率がなかなか上がらない理由

衆議院選も大詰めを迎えるなか、コロナ対策などをめぐって有権者の関心も高いようだが、日本では慢性的に棄権率が高い。「だれに投票しても同じ」という無力感や無関心は、結局のところ当選する顔ぶれがあまり変わらないことに原因があるのかもしれない。

実際、諸外国と比べて日本では議員や閣僚の高齢化が目立つ。同じ顔ぶれの年長男性が仕切る「長老政治」は、よくいえば一貫性や連続性を保ちやすいが、その反面で「成り行きまかせ」「なし崩し」を生みやすいともいえる。

「なんとなくおじさんが多い」と思われがちな議員には、本当におじさんが多いのか。以下ではまず、日本の議員の年齢構成をみてみよう。

『国会便覧151版』を用いて、解散直前の今年8月段階の衆議院議員に絞って算出すると、その平均年齢は58.4歳だった。ちなみに最年長は自民党の伊吹文明氏(83)で、最年少はやはり自民党の鈴木貴子氏(35)だった。

平均年齢58.4歳というのは、他の主要先進国やアジア諸国と比べても高い水準だ。各国の議会が参加する列国議会同盟(IPU)のデータベースで、主な国の下院議員をみてみると、

・米国 58.4歳
・英国 51歳
・フランス 49歳
・ドイツ 47.3歳
・イタリア 44.25歳
・韓国 54.9歳
・シンガポール 48.3歳

全くの偶然で米国と同じだったが、それを除くと日本の衆議院議員の平均年齢の高さがうかがえる。

衆議院議員の半分以上が「おじさん」

次に、年代別と性別の分布でみると、衆議院の「おじさん率」がより鮮明になる。衆議院議員に占める50代男性は29.7%、60代男性は23.2%で、その合計は52.9%にのぼった。

この点で他の国と比べると、

・米国 21.3+20.4=41.7(%)
・英国 18.9+11.5=30.4(%)
・フランス 18.9+9.0=27.9(%)
・ドイツ 19.9+8.0=27.9(%)
・イタリア 14.8+5.2=20.0(%)
・韓国 50.8+17.2=68.0(%)
・シンガポール 22.1+7.4=29.5(%)

こうしてみると、ダントツ一位は6割を超える韓国に譲るとしても、衆議院の52.9%も世界屈指といって差し支えない。ちなみに、議員の平均年齢で日本と同じだった米国では、女性の割合が日本より高いため、議会下院の「おじさん率」は4割程度にとどまる。