これを後押ししているのが、選挙制度の問題だ。近年では政党助成金を分配する政党の権限が強くなり、知名度や資金力のある一部の議員を除けば、小選挙区制でも比例代表制でも候補を公認する政党の影響力が強くなる。結果的に、すでに地歩を固めている年長者が党内の公認獲得レースで有利になりやすい。

政党内部の力学は、議員の公認だけでなく閣僚の人事にも影響してくる。自民党一強といわれながらも、閣僚の顔ぶれは各派閥の力関係を反映したものになりやすい。そのため、それぞれの派閥からそれなりの経験と実績のある議員をピックアップするとなると、どうしても年長男性に偏りやすくなる。

こうした条件の積み重ねが、世界でも屈指の長老政治を生んできたといえる。

長老政治が日本から奪ってきたもの

それでは、長老政治は日本にどんな影響をもたらしてきたか。「安定」のもとでさまざまな要求が抑えられやすいことの象徴は、女性の社会進出が大きく改善してこなかったことだ。

ジェンダー差別
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世界経済フォーラムが毎年発表している男女平等指数(グローバル・ジェンダー・インデックス)の2021年版で日本は156カ国中120位だった。これは先進国の最低レベルで、女性の社会参加が制限されやすいイスラム圏のアラブ首長国連邦(77位)やインドネシア(101位)より低い水準だ。

日本の場合、「経済的機会」や「政治進出」の項目が全体の足を引っ張っている。実際、今回の解散直前の衆議院議員に占める女性の割合は10.2%に過ぎなかった。

欧米の多くの国では一定程度の議席を女性に配分する積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)が導入されているが、日本では主に年長男性議員の反対から実現に至っていない。そこには「枠を設けることは自由な競争を阻害する」「男性議員が多いのは有権者の選択の結果」という言い分があるが、もともと有利な条件で参加する者がレースで勝ちやすいことは当然だ。「自由競争は独占を生む」という古い格言は、ここでも生きている。

世界経済フォーラムの指数は「属性にかかわらず能力を発揮できる環境が競争力につながる」というコンセプトに基づいている。とすると、注意すべきは若ければいいとは限らないことだ。むしろ、若いからいい、年長だからダメと決めつけることは、若いからダメ、年長だからいいと断定するのと同じように、本人の能力や適性を無視したものだろう。

この観点から、長老政治の問題は、意志決定が特定の属性に偏っていることにあるといえる。それは日本の競争力に黄信号を灯しかねないのだ。