岸田内閣は「老害」から抜け出せたのか

大臣クラスの閣僚に絞ると、この傾向はさらに強くなる。自民党総裁選挙では、しばしば「老害」とも批判された二階幹事長(当時)を念頭に「風通しのよい党にする」と主張した岸田氏だったが、総裁選後に発足した岸田内閣の平均年齢は61.8歳で、菅内閣発足時の60.4歳よりわずかだが高くなった。

これに対して、日本と同じく、内閣が基本的に議員で構成される議院内閣制を採用する主な国をみてみると、いずれも50代だ(ドイツの数値は8月段階のメルケル政権のもの)。

・英国 50.1歳
・ドイツ 55.9歳
・シンガポール 57.8歳

大統領制の米国では閣僚は議員でないが、参考までにみておくと、バイデン政権のもとでの平均年齢は52.76歳だった。米国の下院議員は日本の衆議院議員と平均年齢で同じだったが、閣僚に関しては米国のものが日本より10歳近く若いことになる。

米国上院議事堂
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次に、閣僚に占める50~60代の男性の割合をみてみよう。岸田内閣は71%、菅内閣は66%と、いずれも衆議院平均52.9%を大きく上回った。

これに対して、やはり議院内閣制の国では、

・英国 53%
・ドイツ 26.6%
・シンガポール 75%

シンガポールが日本をわずかに上回るものの、日本が閣僚の「おじさん率」で多くの国を上回ることも確かだ。ダイバーシティ(多様性)が強調される現代にあって、日本の閣僚にそのトレンドはほぼ関係ないようである。

ちなみに米国では、ハリス副大統領などの女性や、39歳のブティジェッジ運輸長官をはじめ30~40代も多いため、閣僚に占める50~60代の男性の割合が36%にとどまった。

また、やはり大統領制の韓国では、閣僚の平均年齢が60.25歳で、そのうち50~60代男性の割合は75%にのぼり、日本とほぼ同じ水準だった。

党内で力を持つ年長議員に偏る仕組み

なぜ日本の議員には、多くの国に比べても50~60代の男性が目立つのか。そこにはいくつかの原因が考えられる。

まず、文化の問題だ。「年長男性を前面に立てれば格好がつく」という考え方は、PTAやマンションの自治会など我々の日常生活でも珍しくない。そのため、議員の「おじさん率」の高さは有権者の志向の問題でもある。欧米と比べて、韓国やシンガポールでも議員や閣僚に50~60代男性の割合が総じて高いことから、これは日本を含むアジアに根強い文化といえるかもしれない。

ただし、政治にも原因はある。日本では地盤、看板、カバン(資金)のいわゆる「三バン」を背負った二世、三世議員が多く、ここでも血統やイエといった伝統的な価値観が根強い。二世や三世は代替わりのタイミングで30代、40代でも議員になりやすいが、世襲候補が多くなれば、新しい力が出てくることは難しい。