脱炭素でも国際社会に後れを取っている日本
菅政権が打ち出していたもう一つの目玉、脱炭素も基本的には同じだ。
昨年10月、首相としての所信表明演説で菅氏は「2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする」と表明し、その後「2030年までに2013年と比べて温室効果ガス排出量を46%削減する」中期目標も打ち出された。これだけみれば、菅氏のリーダーシップが発揮されたようにも映る。
しかし、これとて国際的な動向を踏まえれば、成り行きまかせの決定だったといえる。
世界的自動車メーカー、メルセデスが2017年に「2022年までに全ラインナップを電動化する」と発表したことに象徴されるように、欧米ではいち早く脱炭素に向けたシフトチェンジが進んできた。これに対して、既存の省エネ技術に優位のある国内自動車メーカーの消極的な反応もあって、日本では電気自動車の普及などが遅れがちだった。
長老政治のままで日本の未来はあるか
ところが、米国で地球温暖化そのものに懐疑的なトランプ政権が退場し、温暖化対策に熱心なバイデン政権が誕生したことで、欧米と日本の温度差がこれまでになく鮮明になった。だから、少なくとも形式的には欧米のトレンドに合わせた、というのがコトの経緯だ。そこには次の時代への展望も開拓精神も見受けられない。
一部の論者が「有能さ」を高く評価する菅政権ですらそうだったとすれば、他は推して測るべしである。時代の変化に成り行きで付き合う長老政治は、国際的な評価や競争力を押し下げ、日本の行く末すら危うくしかねないのである。
それは究極的には、長老が選挙で当選することを許してきた有権者の問題でもある。岸田首相は今回の選挙を「未来選択選挙」と呼ぶが、長老政治を抜け出し、有権者が本当に未来を選び取るためには、各党が公約に掲げている目先の給付や支援の多さだけなく、自分の選挙区の候補のこれまでの言動を思い出してみるところから始めるしかないだろう。