米中対立が激化する中で、日本はどんな立場を取ればいいのか。国際政治学者の六辻彰二さんは「海外の報道をみると、『日本は米中両国に配慮する曲芸で乗り切った』と言える。だが、今後、日米の温度差が表れるほど米国は対日圧力を一層強めていくことになる」という——。
中国との緊張がエスカレートするのを慎重に避けた
4月16日に行われた日米首脳会談について、日本メディアには菅首相がバイデン大統領にとって最初に迎える外国要人であること、両首脳が「ヨシ」「ジョー」とファーストネームで呼び合ったこと、全米オープンゴルフで優勝した松山英樹選手が首脳間の話題にのぼったこと、さらに東京五輪やコロナ対策での協力など、日米の緊密さにフォーカスする論調が目立った。
これを反映してか、今回の首脳会談に関しては、主に保守派の間で評価が高いようだ。共同声明で尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲であることが改めて確認されただけでなく、52年ぶりに台湾についての言及があり、さらに香港や新疆ウイグル自治区での人権問題への懸念が盛り込まれたことなどが、その理由だろう。
さらに、中国企業が大きな存在感をもつ情報通信分野に関して、日米が5Gの共同開発を推し進めることに合意したことも、技術的優位を確保して中国ぬきのサプライチェーンを目指すデカップリング戦略の布石と評価される。
しかし、共同声明を細かくみていくと、こうした評価が日米首脳会談の一面にすぎないことがわかる。つまり、日本政府がこれまで以上に米国の中国政策に協力的な態度をみせたことは間違いないが、それと同時に中国との緊張がこれ以上エスカレートするのを慎重に避けたことも確かだからだ。