以上を要するに、共同声明からは、バイデン政権が加速させる中国包囲網の形成にこれまでより歩調を合わせながらも、尖閣諸島の領有など譲れない部分を除き、中国との対立激化を避けようとする日本政府の姿勢がうかがえるのだ。

ブッシュ政権の下で国家安全保障会議(NSC)メンバーであった米国屈指の知日派、ジョージタウン大学のマイケル・グリーン教授は16日、フランス24のインタビューに対して、「バイデン政権は中国に奪われたアジアの失地回復に躍起だが、日本には進もうとする道があるようだ」とコメントしている。

中国メディアの反応…批判の矛先は米国に集中

こうした日米の温度差は、中国も理解しているようだ。

日米首脳会談を受け、中国政府は17日、「台湾、香港、ウイグルは中国の国内問題」であり、「中国の核心的利益に属する問題に、いかなる干渉も許されない」という談話を発表した。この強い反応は、日米両政府にとって想定内のものであったろう。

中国・北京・天安門を警備する武装警察
※写真はイメージです(写真=iStock.com/kool99)

むしろここで注目すべきは、日米首脳会談の共同声明を受け、中国メディアから日本批判の大合唱が発生していないことだ。中国メディアの老舗、新華社通信は17日、「日米首脳が共同声明を発表した」と淡々と事実のみを伝えただけで、これといったコメントを加えなかった。中国中央電視台(CCTV)に至っては、Facebookのページに両首脳の写真と簡単な説明を掲載しただけで済ませている。

例外的に詳細な論評を掲載したのは、中国の英字紙グローバル・タイムズだった。「曲げられた菅の中国政策」と題した18日の社説では、「バイデン政権に丸め込まれて米国の尻馬に乗った」と日本を批判したうえで、「中国の発展は止まらない」「注意しなければ20~30年後に日本はその結果を見ることになる」と警告している。

つまり、この論評では「日本は主体的に中国包囲網に加わろうとしているわけではない」といったニュアンスで捉え、日本の「不注意」をけん制しながらも、むしろ批判の矛先は米国に集中しているのだ。

グローバル・タイムズは同じ18日にもう1本の「中国は競争相手でも、ましてや敵でもない」と題する社説を掲載しているが、このなかで米国に対して「相手を一方的に貶めて低く扱うのではなく対等に扱うべきだ」と強調する一方、日本に関しては「日本にとってあまり関係のない問題を含む、多岐にわたるテーマを含んだ共同声明に、菅首相が距離を置きたがっていたことが目についた」と評するにとどめている。