言い換えると、米中に両足をかける従来の方針は大きく変わっていないものの、米中の距離がこれまで以上に離れるなか、日本政府はその足をいっぱいに広げた曲芸に近い外交を演じたのであり、この温度差がある以上、米国は今後ますます日本に立場を鮮明にするよう求めてくるとみてよい。

米国メディアの報じ方は分裂しているが…

これに関してまず、米国で日米首脳会談がどのように報じられたのかをみていこう。

米国にも「緊密さ」を強調する報道はある。例えば、米国を代表するメディアの一つワシントン・ポストは17日、「米国の同盟関係のショーケースである日本は中国への対応を決定」という見出しで、「菅首相はこれまでの日本の首相と異なり、中国に対してハッキリとコメントした」「両首脳は中国への対応で固い決意を共有した」と報じた。

保守的メディアの代表格で、かつてトランプ政権支持が鮮明だったフォックス・ニュースも17日、「日米首脳は中国や北朝鮮の挑戦を一致して退けると述べた」と強調している。

これに対して、もっと冷めた見方もある。その代表はニューヨーク・タイムズだ。同紙は16日、「5G分野で日米が協力して技術的優位を保つこと」の合意にフォーカスした記事を掲載したが、そのなかでは「日本が米中対立に巻き込まれるのを避けるため共同宣言での表現を和らげることを試みた」とも指摘している。

これに近いのが政治専門サイト、ディプロマットで、19日の論評でやはり両首脳の温度差に触れたうえで、「コロナ対策と景気対策が順調といえないなか、菅首相は米国からのワクチン供給と好調の米国市場をあてにしたい一方で、今年10月の衆議院の任期満了まで外交に入れこむことのリスクを考えている」と評した。

米国にも、中国にも配慮せざるを得ない日本の苦悩

このように米国の主要メディアでも見方が分かれるのは、いわば当然ともいえる。日本政府が米中それぞれの許容範囲いっぱいにまで足を広げたことで、見方によっては米国にこれまで以上に協力的に映るし、角度を変えれば中国との関係を悪化させないようにしたこともうかがえるからだ。

このうち以下ではまず米国との関係についてみていこう。今回の首脳会談で最大の焦点の一つになったのは、そもそも共同声明を出せるかだった。