「利下げこそがインフレ抑制につながる」と公言

トルコリラの下落に歯止めがかからない。リラの対ドルレート(図表1)は11月23日の相場で急落、一時1ドル13.45リラまで下げた。その後は下げ幅を縮小したものの、終値は11日連続で過去最低を更新、年初来の下落率は45%に達した。ユーロとの間でもトルコリラは史上最安値を更新、日本円でも節目となる10円台を切った。

リーマンショック以前の新興国ブームの際、トルコリラは日本でも人気が高い通貨の一つであった。2007年10月には月末値で1リラ99.145円まで上昇したが、今やその価値は10分の1。その後はリラ相場の急落が相次いだことを受けてFX(外国為替証拠金取引)でロスカットが多発、多額の損失を被った投資家も少なくないはずだ。

急落するトルコリラの対ドル相場
出所=トルコ中銀

リラの暴落を引き起こしているのは、もちろんエルドアン大統領だ。利上げではなく利下げこそがインフレ抑制につながると公言してはばからないエルドアン大統領の意を酌む形で、トルコ中銀は10月と11月の会合でそれぞれ利下げを実施、直近の政策金利は15%と最新10月の消費者物価上昇率(19.9%)を下回っている。

そのため、物価変動の影響を除いた実質金利は既にマイナス(15.05-19.9%=▲4.9%)となっているが、トルコ統計局が公表するインフレ率は実勢よりも割り引かれているという理解がコンセンサスとなっている。したがって、実際の実質金利はマイナス幅がさらに大きいことは間違いなく、それがリラの弱さの一因になっていると考えられる。