さて折しも、日本でも円安が話題となっている。リラが前日から15%下落した11月23日、円相場はアジアで一時115円台まで値下がりした。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が再任されたことを受けて米ドルが買われた結果だが、4年8カ月ぶりの円安ドル高となった。もっともそれ以前から、円の歴史的な弱さが注目されている。

円の実効為替レート
出所=国際決済銀行(BIS)

円の総合的な実力を測る実質実効為替レート(図表3)は10月時点で70.82と、日本が変動相場制度に移行した直後の1970年代の水準まで下落した。名目実効為替レートは80.57と90年代中頃の水準までの下落にとどまっているが、半導体に代表される世界的な供給不足や原油価格の急激な上昇もあって「悪い円安」が強く意識されている。

通貨安がもたらすデメリットを認識するべきだ

既往の円安を、信認がすでに地に落ちているリラと同様に語るべきではない。日本は経常収支が黒字であり、円は曲がりなりにもハードカレンシーの一角を占める。しかし政府の負債を国債の発行で返済し、利払いを低金利で抑制し続ける国の通貨に魅力などあるだろうか。少なくとも海外の投資家は、円に対する信認は弱めていると言っていい。

政府が他国に類を見ない巨額の負債を抱える日本の場合、低金利を脱することは容易でない。とはいえ、通貨政策もまた重要な経済政策のうちの一つであることを、失われた30年の間に日本は軽視し過ぎたのではないか。日本が今すぐトルコのようになるとは考えられないが、通貨安がもたらすデメリットをわれわれはきちんと認識すべきだろう。

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