先の衆院選では自民党が絶対安定多数を確保し、ジェンダー平等の実現を掲げた野党が敗北しました。そのことから国民はジェンダー平等に無関心だったと結論づけるような報道も。しかし、ジェンダー問題を研究する大正大学准教授の田中俊之さんは「それは真っ赤なウソ」と指摘します──。
立憲民主党の執行役員会で発言する枝野幸男代表=2021年11月2日、東京・永田町の衆院議員会館
写真=時事通信フォト
立憲民主党の執行役員会で発言する枝野幸男代表=2021年11月2日、東京・永田町の衆院議員会館

野党は政策のアピールに失敗した

先の衆院選では、野党の中に政策としてジェンダー平等を大きく掲げたところもありました。僕としてはこれを国民がどう判断するか注目していたのですが、結局はジェンダー平等を打ち出していなかった自民党の勝利に終わりました。

これを受けて、ニュースでは「ジェンダー平等は国民の間であまり争点にならなかった」などと言われました。しかし、僕は野党の打ち出し方が悪かっただけだと思っています。彼らは、ジェンダー平等を票につなげるためのアピール方法を間違えたのです。野党の政策ブレーンは何をしているのかとさえ思いました。

どこの国でも、国民のいちばんの関心事は経済と雇用です。これらにジェンダー平等がどう寄与するのか、一般の人にとってはなかなかわかりにくい。ですから野党は、ジェンダー平等の達成をもっと経済や雇用と関連づけてアピールすべきだったと思います。

例えば男女の賃金格差問題です。ほとんどの人が結婚し、夫の稼ぎだけで家族全員が暮らしていけた時代には、そうした格差は半ば容認されていました。女性は正社員でもほとんどの人が一般職で、男性総合職に比べて給与が低くても、それで生活に困る人はそう多くはなかったのです。