マスクの着用推奨年齢を「2歳以上」とする要望が全国知事会から出て大きな反発を招いた問題。なぜそんな案が出てしまったのでしょうか。自身も2歳の子どもを持つ大正大学准教授の田中俊之さんが解説します──。
2015年5月22日、東京で園児を連れいている保育士たち
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「可能な範囲で一時的に」という表現にとどまった

2月初旬、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて全国知事会などが「2歳以上の保育園児もマスク着用を」という要望を出しました。これを受けて、一時は厚生労働大臣も前向きに進めていくべきとの認識を示し、大きな議論を呼びました。

異論が相次いだことから、結局、厚生労働省は「2歳以上」を撤回。保育所などへの感染症対策としては、「可能な範囲で一時的にマスク着用を推奨する」という通知を出すにとどまりました。

子どもの発達について無知を露呈した

この「2歳児マスク問題」は、保育所への感染症対策が、いかに現場を知らない人ばかりで議論されているかがよくわかるものだったと思います。子どもの発達に関して信じられないほどの無知を露呈していて、2歳の子を持つ僕としては脱力感すら覚えるほどでした。

確かに、不織布マスクは感染対策に有効だと証明されていますし、最近は保育園の休園も相次いでいます。ここから、知事会や大臣は「園児がマスクをしていないからではないか」「じゃあマスクを着けてもらおう」と考えたのではないでしょうか。

そう思うに至った背景には、子どもへの大きな無理解があると思います。小さな子どもは、嫌だと思ったら着用を続けてはくれません。育児経験がある人や、保育園の先生など子どもと接する人ならわかっていることですが、おそらく知事会のメンバーや大臣は、そうしたことに想像が及ばなかったのでしょう。