政府が発表した2022年版「男女共同参画白書」では、「20代男性の約4割がデート経験なし」という結果が注目された。立命館大学教授の筒井淳也さんは「一部のメディアでは、そうした傾向は昔からあり最近変化したわけではないという論調も見られましたが、データからは若者の性行動が明らかに不活発化していることが見て取れます」という――。
若者の性行動経験率は2005年がピーク
今回の男女共同参画白書には、調査の結果から、若者を対象とした「恋人として交際した人数」を集計したグラフが掲載されています。その中で、「いない」と答えた人は20~30代の独身女性では24.1%、独身男性では37.6%にのぼっています。特に20代男性では、交際経験がない人は4割近くという結果になりました。
この結果を受けて、新聞やテレビなど大手メディアでは「若い人が交際しなくなったのでは」といったニュアンスで報道されているようです。一方、ネットメディアでは「そうした傾向は昔からあり、最近変化したわけではない」という論調も見られました。
この分野の研究者の間では、「若者のデート・性交(セックス)経験率はここ十数年低下傾向にある」というのが共通理解になっています。これは、日本性教育協会が6年に1度実施している「青少年の性行動全国調査」の結果からも明らかです。
同協会の調査結果を、高校生・大学生の男女に絞って見てみると、デート経験率、キス経験率、性交経験率の多くが2005年を境に低下傾向となっています。例えば大学生女子の性交経験率は、調査を開始した1974年から上昇を続け、2005年には62.2%になりました。ところがその後は、2011年が46.0%、2017年が36.7%と下降の一途をたどっています。
大学生男子も同じです。1974年から上昇を続けて2005年には63.0%になりましたが、その後は53.7%、47.0%と下がり続けています。次の調査予定は2023年ですから、そこで違う結果が出る可能性もありますが、現時点では2005年前後をピークとして「若者の性行動は不活発化している」と結論づけることができます。