就職氷河期に就活をしたロスジェネ世代の中には、非正規雇用などで収入が不安定なまま歳を重ねている女性も少なくありません。ジェンダー問題の研究者である田中俊之さんは「今は未婚化や晩婚化も進んでいますから、男だから女だからではなく、一人ひとりが自分で自分を養えるだけの収入を得られる社会にしていかなければなりません」といいます──。
費用を計算して頭を抱える女性
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今から正社員になっても間に合わない

10月に朝日新聞デジタルから配信された「ロスジェネ単身女性の老後 半数以上が生活保護レベル 自助手遅れ」(2021年10月14日)という記事は、非常に衝撃的な内容でした。記事によれば、現在40~50歳ぐらいのロスジェネ世代の独身女性は、その大半が老後に貧困化するというのです。

ここで言う「独身」には、未婚の女性も夫と離別した女性も含まれます。いずれであっても、現段階での仕事が非正規雇用の場合、たとえ今から正社員になったとしても貧困化は防げないという、かなり絶望的な話でした。

そもそも結婚や再婚をするかどうかは個人の自由なのに、女性の場合は「しない」を選択しただけで老後の生活に困ることになるわけです。これは非常に大きな問題だと思いました。

現状は働く女性の約半数が非正規雇用で、男女の賃金格差も依然として大きいままです。独身女性の貧困化を防ぐには、これらを早急に改善する必要があるのではないでしょうか。

男性に高年収を払える企業は少ない

しかし、こうした問題に無頓着な男性は少なくありません。先日は福島県相馬市の立谷秀清市長が、少子化問題について「女性に悪いけど、男性の所得を上げていかないと人口問題は解消しない」「男性の年収と婚姻率は面白いように比例する」などと発言しました。男性の年収アップこそが結婚や出産につながるのだという意味合いでしょう。

この意見はいろいろな前提が間違っていると思います。今の日本で、家族を養えるだけの給料を男性社員全員に払える会社がどれだけあるか。日本の平均賃金は世界的に見て低いと言われており、今では韓国にも大きく負けています。