数年前から、FXにはまる日本の専業主婦たちが、為替相場に影響を与えるほどの額を動かす「ミセス・ワタナベ」として世界に知られるようになった。しかし、夫の扶養に入っている主婦がうかつにFXに手を出すと痛い目に遭う可能性があることをご存じだろうか。

40代で年収800万円(税引き前)の会社員の夫、専業主婦の30代の妻、16歳と13歳の子供2人の家庭を例に説明しよう。妻に収入がない場合、夫は社会保険料控除99万7310円、基礎控除38万円、配偶者控除38万円、配偶者特別控除0円、扶養控除(子供2人)38万円、生命保険料控除5万円、個人年金保険控除5万円を受けて、所得税を32万5000円納めることになる。

もしこの妻がFXで76万円の利益を得たとしよう。すると配偶者控除を受けるための条件である配偶者(妻)の「年間の合計所得金額が38万円以下であること」という条件を満たせなくなり配偶者控除は0円に。

配偶者特別控除の条件である「配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満であること」(夫の年収が1000万円未満であることが条件)も適用されずこちらは0円のままだ。

この前提で税額を計算すると、妻がFXで利益を得た後の夫の所得税は7万6000円増えて40万1000円となる。妻も76万円から基礎控除38万円を引いた38万円の所得があることになり1万9000円の所得税が発生することになる。

結果、夫と妻の所得税合計は9万5000円増えてしまう。もちろん住所地の都道府県と市区町村に納める住民税も3万~4万円増えることになるだろう。

さらに夫の勤務先に家族手当等の制度があった場合は会社の基準により異なるが、減額される可能性が高くなる。場合によっては、トータルで年間15万円以上の負担増となってしまうだろう。

妻にパート収入がある場合はさらにやっかいな結果となる。仮に、いわゆる「年収103万円の壁」ギリギリまで働いているケースで試算してみよう。