骨葬がスタンダードな葬式として取って代わる可能性もある
とはいえ、遺族心情の問題が残る。先述のように「死亡後数日をかけて最後のお別れをしたい」という遺族は、骨葬に抵抗をもつかもしれない。
しかし、骨葬は必ずしも「タブーの葬送」ではないことを知ってもらいたい。北海道の函館や東北沿岸部、信州や北関東、九州の一部などでは明治中期から骨葬が実施され、それが当たり前の葬式になっている。
それは、職業が影響をしていることが多い。沿岸部などの漁師町では、漁のシーズンになれば船団を組織して海に出る。そこに突発的に葬式が発生すると船が出せなくなり、村の経済を揺るがす事態になってしまう。
また、古くから養蚕が盛んであった長野県松本市などでは、養蚕業は衰退したものの骨葬の風習は今でもしっかりと残っている。これも、蚕の世話を終えてから、ゆっくりと葬式支度をするための合理的な考えに基づくものである。同様に、全国の農村で骨葬が残る地域は少なくない。
さらに、かつて企業で実施されていた社葬は骨葬が基本。大勢の従業員やステークホルダーが参列できるよい時期をみて、大勢で送るのが社葬である。
多死社会や核家族化による孤独死問題、さらにコロナ禍が追い打ちをかける形で従前の葬式が大きく変わる局面にある。骨葬への「慣れ」が広がれば、むしろそれがスタンダードな葬式として取って代わることも十分考えられる。