この10年で2倍に増えた東京23区内の孤独死も骨葬増加の要因

しかし、近年、状況が変わってきている。先述のコロナ感染死のケースだけではなく、多くの人々が骨葬にせざるを得ない状況が生まれつつあるからだ。

特に孤独死による骨葬の増加が増えている。

例えば東京23区で孤独死と考えられる数は、2018(平成30)年で3882人。この10年で倍近くにまで増えている。

一般社団法人日本少額短期保険協会孤独死対策委員会が2020(令和2)年に実施した調査では、孤独死の発見平均日数は17日だ。こうした孤独死体は普通の葬式はできず、骨葬になる。

内閣府が実施した「孤独死を身近な問題と感じるものの割合」調査(2018年)では、60代以上の一人暮らし世帯で50%を超える割合が「とても感じる」「まあ感じる」と答えている。大都市圏では葬送の簡素化もあいまって、今後、葬儀社が「骨葬プラン」として広く提供しだすことも十分、考えられる。

骨葬のメリットは確かに、ある。ひとつは、火葬場の予約が比較的取りやすくなることである。

首都圏では多死社会を背景にした火葬場の混雑が社会問題化している。その原因は多くの葬式が午前中に実施されるため、お昼前後に火葬が集中するからである。横浜市などでは死者が増える冬場、お昼前後の火葬を希望すれば1週間待ちもざらだ。

それが朝一番や夕刻の時間帯であれば、比較的、火葬炉が開いていることが多い。このタイミングで先に遺骨にしておけば、遺体の腐敗を心配することなく、ゆっくり葬式の準備ができる。仮にコロナ感染症蔓延で緊急事態宣言が発令されていた場合でも、宣言が明けてから親族知人を呼んで、葬式を実施するということが可能になる。

火葬場も朝と夕方は比較的すいている
撮影=鵜飼秀徳
火葬場も朝と夕方は比較的すいている

また、遺体安置施設利用やドライアイス、エンバーミング(遺体に消毒殺菌・防腐・修復・化粧などをする)などにかかるコストも減る。

さらに、東京の病院で亡くなって、故郷の菩提寺で葬式を挙げたいという場合や、海外で亡くなって日本で葬式をしたい場合などでも遺骨の移動は簡単だ。棺桶の長距離移送となれば、莫大なコストがかかる。

葬式の場所も自由度が増す。自宅での葬式はもちろん、ホテルやレストラン、あるいは野外でも可能になる。高級シティホテルでは生身の遺体での葬式はNGだが、骨壺に入った状態であれば葬式(お別れの会)をしてもかまわないとする葬送のプランもすでにある。つまり、遺骨にしておけば、必ずしも葬儀会館で葬式をする必要がなくなるのだ。