世間から見放されたガソリンスタンドマン
「おまえみたいな役立たず、出ていけ!」
親や世間からそんな心ない言葉で罵られ育った子供たちを、20年間教師を務めた私は嫌というほど知っています。大人になった彼らは今、ワーキングプアとして社会の底辺を這うような生活を強いられることも多いようです。
タバコを吸いながら給油していた、某ガソリンスタンド店員。「ワシら、どうでもええねん、ほっといてくれ」。やる気の「や」の字もありません。その日暮らしのお金さえ稼げればいい。そんな状態でした。ところが、ある日を境に彼らは自ら目標を掲げ、自分史上最大のやる気を発揮したのです。
彼らはドロップアウトした世界でたくさんの修羅場をくぐり抜け、成功体験もしていました。メソッドを習得済みの上司はそれを知り、こう言いました。
「年間3万人以上が自殺している。君たちは最低最悪の失敗やトラブルを乗り越えてこれまでやってきた。ならば、仕事もこの先の人生も十分やっていける」
粘り強い激励が、周囲から完璧に見放されてきた者たちの情動を揺り動かし自信を回復させました。
彼らが最初に決めたのは、「将来、自分はこうありたい」という理想像でした。その実現のためと思って奮い立ち、生活習慣や仕事への取り組みも飛躍的に改善しました。そして夢も希望もなく自暴自棄だった彼らは「本社」で表彰されるほど業績を向上させたのです。
2009年、埼玉西武にドラフト1位で入団した菊池雄星投手を含む岩手・花巻東高校野球部員もこの方法を実行しました。07年夏の甲子園で優勝した佐賀北高校も同様で、彼らの最高の目標は甲子園優勝、中間の目標はベストエイト、最低限の目標は甲子園出場と設定し、優勝しました。
企業はいまだに賞罰といった外発的な動機付けだけで社員を動かそうとしています。あのリーマン・ショック後でさえ、外資系企業では博打的な飽くなき利益至上主義の体質は変わらないように見えます。だから私はこんな目標を立てています。「空虚な欧米人の心を、救おう」。常に優先すべきは、心の利益。それこそが不安や恐怖を振り払い、心から燃えてくる内発的なやる気の源となるのです。