入念な資産査定と米国拠点を通じた詳細なモニタリング

CLOは、投資適格未満の企業に対する貸出、いわゆるレバレッジド・ローンを束ねて証券化した金融商品だ。信用力の低い企業向け貸出を束ねているため利回りが高く、国内に有望な投資対象を欠く日本の大手銀行がこぞって触手を伸ばした。

日銀と金融庁が昨年6月に発表したCLOに関する初の合同調査では、2019年9月時点の大手行のCLOの保有額は合計13兆8000億円で、3年半前の2.7倍に拡大、世界のCLOの2割弱を日本の金融機関が保有する、最大の投資家になっている。最大の保有額を持つ農林中金を筆頭にメガバンクやゆうちょ銀行、地方銀行などがCLOを多く保有している。

農林中金の関係者は「日本の金融機関はCLOの投資では、最も信用力の高いトリプルAの格付けの商品に絞って購入しているほか、投資に当たっては商品スキームについて入念なデューデリジェンス(資産査定)を行い、裏付けとなっているローンについても米国拠点を通じて詳細なモニタリングを継続して実施している」と語る。

合同調査でも、邦銀が保有するCLOの99%以上がトリプルA格で、米銀(77%)、英銀(50%強)に比べ高い水準にある。かつ、ほぼすべてが満期保有で占められている。

投資ノウハウはどこまで通用するか

「足元ではスプレッド(上乗せ利回り)が縮小し、CLOの投資妙味は薄れているが、コロナ後の景気回復を受けて今後金利が上昇してくる局面では、再びCLOは魅力的な金融商品になる」(大手機関投資家)と見られている。

さらに農林中金では地方銀行などを対象にしたPEファンド「農林中金キャピタル」を10月にも立ち上げる計画だ。「運用難に悩む地域金融機関などから資金を募り、資金需要が旺盛な国内スタートアップ企業などに成長資金を投じる」(農林中金関係者)という。

まさに市場運用は農中にお任せという格好だが、冒頭の大学ファンドにみられるようにリターンは常にリスクと裏腹。グローバル運用に強みを持つ農林中金の投資ノウハウ・スキルがどこまで通用するか注目される。

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