「農中の細川たかし」と呼ばれJAや政界と交渉

宮園氏は1953年生まれで佐賀県出身。1976年に東京大学法学部を卒業して農林中央金庫に入庫。秘書役や人事部長、総合企画部長など中枢を歩み、2011年から2018年まで副理事長を務めた。「JA全中(全国農業協同組合中央会)幹部や政界との交渉などを担った」(農林中金関係者)という。

その後、企業年金連合会理事長を経てGPIFに転じた。宮園氏のGPIF理事長就任が決まった頃、ある農林中金関係者は私の取材に宮園氏の人柄をこう評価した。

「明るく前向きな性格で、地方のJA関係者とも強力なパイプを築いてきた。演歌歌手の細川たかしに似ていることからJAグループでは『農中の細川たかし』で通っているほど。本人もそのことを自覚しているようで、宴会では細川たかしの『北酒場』などを唄い、場を盛り上げるような一面もある」

GPIFの資産運用の割合を示す基本ポートフォリオは「外国資産への運用割合が半分を占めており、為替変動を含めたリスク度は一段と高まる」(市場関係者)とされる。宮園氏も「2021年度は2020年度のような一方的な株価の上昇が見込み難い。よりきめ細かなリスク管理の必要がある」と手綱を締める。「もっている男」の真価が問われる。

AAA格の優良CLOを揃える高い運用力

さらに、農林中金の運用ビジネスで注目されるのは、農中グループの投資会社「農林中金バリューインベストメンツ」だ。

同社はUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を再建した森岡毅氏が率いるマーケティング専門集団「刀」と2019年8月に協業を開始し、金融商品のブランドを「おおぶね」に統一、開始2年間で口座数が約7倍、運用規模が13倍に拡大するなど、高い運用成績を上げている。

農林中央金庫本店の玄関前
撮影=プレジデントオンライン編集部
農林中央金庫本店の玄関前

そして、農林中金の運用力を語るうえで欠くことができないのは世界最大のCLO(ローン担保証券)投資家であることだ。農林中金のCLO投資残高は2019年12月末の約8兆円をピークに、直近の21年3月末には6兆9000億円まで減少しているが、依然としてその投資残高は抜きんでている。

農林中金は市場運用資産の11%をCLOに投資している。そのすべてが最上位のAAA格の優良CLOで、満期保有で占められている。ただ、運用利回りは「かつてはLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)プラス1.3%があったものが、足下ではLIBORプラス1.0%まで低下してきている」(農林中金)という。