“メモリ半導体特需”に異変が…
8月上旬、世界の株式市場の中で韓国総合株式指数(KOSPI)の軟調さが目立った。個別株の推移を見ると、メモリ半導体分野で世界トップのシェアを持つサムスン電子の下落が目立つ。半導体企業が多く集積する台湾株も売られた。
韓国株が売られた原因は複数ある。最も重要と考えられるのが、メモリ半導体の一つである“DRAM(Dynamic Random Access Memory)”の不足がいくぶんか解消され、需給の逼迫感が一服し始めたことだ。それは、メモリ半導体などの輸出によって景気回復を実現してきた韓国経済の下振れリスクを高める要因といえる。
8月に入り、ウォンもドルに対して売られた。世界の主要投資家は、目先、DRAM価格が調整し、韓国経済の回復ペースがこれまでに比べていくぶんか弱まる展開を真剣に考え始めた。
サムスン電子などの韓国企業は、わが国企業から半導体の部材や製造装置を調達してきた。DRAM価格が追加的に調整すれば、韓国の半導体メーカーなどの収益下振れ懸念は高まるだろう。それはわが国経済にもマイナスの要因だ。
DRAM需要の逼迫感は一服してきている
2017年から2018年にかけて、世界的なデータセンター投資の増加を背景に、IT機器上で作業中のデータを一時的に記録するDRAMなどメモリ半導体の需要が増加した。
データセンター投資の一巡や米中の通商摩擦によるサプライチェーンの混乱によってメモリ半導体市況は調整した後、5G通信の普及による世界的なデータ保存量の増加や、コロナ禍によるパソコンやサーバー需要の急増などによってDRAM需要は押し上げられ、昨年の秋ごろから需給が逼迫し始めた。DRAMなどの価格上昇によって、サムスン電子など韓国半導体メーカーの業績は拡大した。それは、昨年後半以降の韓国経済の急速な景気回復を支えた要素の一つだ。
ここにきて、DRAMの需給が徐々に落ち着きつつある。DRAMの価格データなどを取り扱うサイト「DRAMeXchange」が掲載している価格を確認すると、年初から6月下旬ごろまでDRAMの価格は上昇トレンドにあった。その後、7月に入ったあたりから価格の上昇ペースは鈍化し、徐々に価格が下落した。その背景の一つとして、2021年の前半に各国のパソコンメーカーなどが在庫の確保に優先して取り組み、DRAMの不足感が徐々に解消された。