デロイトUS シニアパートナー ジェームス・クィグリー

デロイトUSのCEOを経て、デロイト トウシュ トーマツ リミテッドの前CEO。デロイトにおける36年のキャリアの中で、数多くの多国籍企業へ助言を行う。社外においても多くの公共団体等の役員・委員を務め、ダボスの世界経済フォーラムにも定期的に招待され、グローバルビジネスの動向について講演を行う。
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全世界150カ国を超える国・地域で、監査、税務、コンサルティング、ファイナンシャル アドバイザリーサービスを提供するプロフェッショナル集団であるDeloitte(デロイト)。そのデロイトが約2年の歳月をかけて調査・分析した結果をまとめ、アカデミックなどの専門機関から高く評価されている『As One-Individual Action・Collective Power』の邦訳が、プレジデント社より『As One――目標に向かって1つになる』として10月に出版されることになった。

本書の著者であり、デロイトの前CEOのジェームス(ジム)・クィグリー氏が来日したのを機に、この本の趣旨について直接インタビューした。

――11年2月、グループの総力を上げたプロジェクトをまとめた『As One-Individual Action・Collective Power』を出版されましたが、なぜ、この本を出版しようと思われたのでしょうか?

リーマン・ショックに続く世界的な不況や、日本においては東日本大震災と、ここ数年、特にリーダーを取り巻く環境が大きく変化しているからです。また、組織の中でのコミュニケーションのとり方も昔と比べてずいぶんと変わりました。私たちは、これまで数多くのリーダーたちに、どのような組織運営をすべきかをアドバイスしてきました。それらの経験から、リーダーの役割が変わってきたことに気づいたのです。

その1つに情報があります。私の場合でいえば、私はこれまでデロイトのリーダーとしてさまざまな情報を組織のメンバーに伝えてきました。これも、リーダーとしての役割の一つだからです。しかし、インターネット、特にソーシャルメディアなどの発達のおかげで、今ではある程度のところまでは、組織のメンバーが自ら必要な情報を取りに行くことができるようになりました。私がすべての情報を伝える必要がなくなったのです。

また、昔と比べて組織の中の多様性が大きくなってきたことも背景としてあるでしょう。企業のグローバル化が進み、さまざまな文化的背景を持った人が存在するようになったことに加え、M&Aによって異なる文化的背景を持った組織を取り込む機会が多くなったこと、さらに、世代間の働き方の違いや、ワークライフバランスの視点など、企業文化を形成するうえでの前提が大きく変化しているのです。

これらの背景は、リーダーの役割が変わってきたということを意味します。