――それでは、新しいリーダーの役割とは何でしょうか? どのようなことを指すのでしょうか?

リーダーの新しい役割は、「共通の目標に向かって、チームを一丸にし、行動させること」です。しかし、これは「言うは易し、行うは難し」で、容易なことではありません。特に組織が大きくなるほど難しい。というのも、組織というのは大きくなればなるほど、組織を構成するメンバーの意識と行動がバラついてしまうからです。

多くの組織では、どれほど優れた戦略があっても、その戦略を実行できない、あるいは思ったような成果を上げることができません。これは、戦略という1つの目標に対して、メンバー全員が同じ方向を向いていないからです。しかし逆に言えば、メンバー全員を同じ目標に向かわせることができれば、成功するということでもあります。つまり、いかにメンバーの意識を目標に合わせ一致団結した行動を取らせるかが、カギとなるのです。これは、リーダーにとって永遠のテーマなのではないでしょうか。

先ほど話した今日的な要因も踏まえ、この永遠のテーマに対する一つの解として、私たちは“As One(一致団結する)”を提案することにしたのです。

――「共通の目標に向かって、チームを一丸にし、行動させること」は、これまでもビジョンとか、理念といった形で繰り返し言われてきたことです。As Oneは、ビジョンや理念とどう違うのでしょうか? また、ビジョンや理念では不足なのでしょうか?

足りません。ビジョンや理念だけでは、人々を実際に動かすことはできません。実際に行動を起こさせるには、組織がどのような集団であるのかを理解したうえで、共通の目的を設定し、その目標を達成するためにどのような方法が適しているかを見極める必要があります。

このことを理解していただくために、私たちがなぜAs Oneの必要性を感じたのかをご説明しましょう。

ご存知かもしれませんが、私たちのサービスは大きく分けると監査、税務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーの4つです。そして、これらのサービスは、基本的にそれぞれ独立した組織として運営されています。具体的には、監査法人、税理士法人、コンサルティングファーム、ファイナンシャルアドバイザリーといった、それぞれのプロフェッショナル集団が全世界規模に展開した組織です。これは、各国における法規制を遵守するためにそうなっているのです。

それを、「デロイト」というブランドで、横串を指している。そんな感じなのです。これは、巨大なグローバル企業が、その傘下に数多くの子会社・関連会社を持っていることとはかなり違います。そのような企業では頂上に本社があって、その傘下に自分の分身をあちこちに作ります。つまり、ピラミッド型です。

でも、私たちにそのような上下関係はありません。ニューヨークのデロイトも、日本のデロイトも、立場は対等です。また、それぞれの国においても、各法人はすべて対等な立場となります。たとえば、日本にはトーマツグループとして、有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツコンサルティング、デロイトトーマツFAS、税理士法人トーマツなど全部で10の法人がありますが、それぞれの専門領域に特化して事業を展開しています。つまり、水平型です。スターアライアンスのように、全世界からさまざまな組織が寄り集まって1つのグループになったようなものをイメージしていただくとわかりやすいでしょう。